版画の種類を解説!高価買取されやすい版画の特徴や有名作家もご紹介

版画といえば絵画の大きなジャンルの1つですが、版画の中にも様々な種類があります。
本記事ではまず、版画の基本情報と版画の種類についてご紹介します。
また、版画は美術品買取市場で非常に人気の高いジャンルでもあります。
高価買取されやすい版画の特徴、買取市場で人気の高い版画の有名作家、おすすめの買取業者の選び方といった版画の買取情報についても解説します。
※本記事の内容は、必ずしも買取価格を保証するものではございません。予めご了承下さい。
目次
版画とは
版画は、油絵・水彩画などと同様に、絵画の表現方法の1つです。
木・金属などの版に彫刻やエッチング(銅などの金属版を腐食させて凹部を作る版画の技法)を施し、インクを転写して複数枚の絵画を制作する技法、またはその技法で作られた絵画作品を指します。
そのため、「描く」ではなく「刷る」「写す」などと表現されます。
版画は印刷によって複数枚の作品が制作されるため、絵の余白に「△△/〇〇」のようなエディションナンバーが記されていることが多いです。
たとえば「15/200」と書いてあれば、「全部で200枚刷ったうちの15枚目」という意味です。
一般的に、刷った数が少ないほど希少性が高くなりやすいと言えます。
版画の原画とは
版画の「原画」とは、版画を制作する元となる、作家自身が描いたオリジナル作品のことです。
この原画をもとに版を彫り、刷ることで版画作品になります。
1点物である原画は、複数枚刷られる版画作品に比べて希少価値が高くなります。
版画の彩色について
版画作品の中には、版を刷ったあとで手作業で彩色を行っているものもあります。
その代表的な技法と言えるのが、棟方志功などが行っている「裏彩⾊」です。
裏彩⾊とは、刷り上げた版画の裏面から絵の具で色を塗るという技法です。
彩色は1枚1枚作家の手で行われるため、版画作品でありながら1点物の作品となっている点が特徴です。
ほかにも、刷り上がった版画に、作家が手作業で絵の具や色鉛筆などを使って加筆・彩色する「手彩色」という技法もあります。
版画と複製画の違い
「原画を写す」というと絵画の世界には複製画もありますが、これは版画とは別物です。
一般的に複製画とは、原画が存在し、それを複製した作品を指します。
複製画とは、原作者の許可を得て、オリジナル絵画を模写または印刷して再現した作品のことです。
絵画を手軽に楽しむために便利なものですが、複製画はオリジナル作品ではありません。
一方で、版画は絵画の表現方法の1つであり、版画作品はれっきとしたオリジナル作品です。
油絵・水彩画・日本画などと同じように芸術的価値があります。
版画の種類
版画の種類には、大きく分けて以下の4つがあります。
- 凸版(木版画、リノカット)
- 凹版(エングレービング、ドライポイント、エッチング)
- 平版(リトグラフ、コロタイプ)
- 孔版(シルクスクリーン、ステンシル)
それぞれの種類の特徴や、それぞれに分類される版画の技法についてご紹介します。
凸版(木版画、リノカット)
凸版(とっぱん)は、版上の凸部分にインクを塗り、その上に乗せた紙に圧力をかけていくことでインクを写す技法です。
版の材料は、木材やゴムなどの加工しやすいものが好まれています。
凸版に当てはまる技法は「木版画」や「リノカット」などが挙げられ、主に浮世絵などに用いられます。
木版画は、写したい面を残して削り取った木の板に紙を載せ、凸部のインクをバレンやプレス機で刷り移す技法です。
一方でリノカットは、リノリウムの板を使って、木版画と同じ原理で写す技法です。
凹版(エングレービング、ドライポイント、エッチング)
凹版(おうはん)は、大きく間接法と直接法に分けられます。
まず「間接凹版」は、版上の凹部分のみにインクを入れ、その上に乗せた紙に圧力をかけていくことでインクを写す技法です。
間接凹版の1種である「エッチング」という技法は、磨いた銅板や亜鉛板などを削り、版を酸で腐蝕させることにより線が出来ていくというものです。
次に「直接凹版」は、銅や亜鉛などを鋭利な刃物で直接彫るという技法です。
直接凹版の1種である「ドライポイント」という技法は、銅板にニードルという先のとがった鉄筆で直接描写するものです。
凸版を用いた代表的なアートには、銅版を使った西洋絵画などがあります。
平版(リトグラフ、コロタイプ)
平版(へいはん)は、平らな版に特別な画材を用いて転写する技法で、古文書や日本画の複製に適しているとされています。
平版に当てはまる技法は、「リトグラフ」や「コロタイプ」などが挙げらます。
リトグラフは、油性の画材で石灰石に直接描画します。
硝酸を加えたアラビアゴムを塗ることで化学反応が起き、描画したものがそのまま表現される技法です。
一方でコロタイプは、写真製法のうちの1つで、ガラス板を原板に用いる技法です。
孔版(シルクスクリーン、ステンシル)
孔版(こうはん)は、用紙の上に孔(あな)を開けた版を置き、孔にインクを通過させて刷る技法です。
凸版・凹版・平版は複製した際に反転しますが、孔版の場合は反転しないのが特徴です。
孔版に当てはまる技法は、「シルクスクリーン」や「ステンシル(ポショワール)」などが挙げらます。
シルクスクリーンは、木枠に張った絹を版とし、色ごとにインクを何層にも重ねる技法です。
一方でステンシルは、色を載せたい部分を色数だけ型を作り、鮮やかな彩色が特徴の技法です。
孔版は現代アートに用いられることが多く、アメリカのロバート・ラウシェンバーグとアンディー・ウォーホルはシルクスクリーンの先駆者だったと言います。
版画の買取価格は高い?
版画は美術品の中でも人気が高いジャンルの1つであり、買取市場でも活発に取引されています。
では、美術品買取市場における版画の買取相場はどのようになっているでしょうか。
版画は複数枚制作されるという性質上、肉筆の絵画に比べると希少性は低くなってしまいがちです。
買取相場という意味でも、同じ作家の肉筆画に比べると低くなってしまう場合も多いです。
しかしながら、有名作家の作品などで、版画作品でも高い価格で買取されるものは多くあります。
また、版画作品の原画には高い買取価格がつくケースも多いです。
以下のページでは、版画のバイセルでの実際の買取例や実際にバイセルの版画買取を利用されたお客様の声など、版画の買取情報について記載してございます。
参考までにぜひご参照ください。
バイセルでの絵画の買取実績は?
バイセルには、版画を含む絵画の買取実績が数多くございます。
以下のページでは、有名作家の絵画の買取相場や、バイセルでの実際の絵画の買取例について記載してございます。
参考までにぜひご覧ください。
高く買取されやすい版画の有名作家
版画の買取において、作者の知名度や人気は買取価格に大きく影響します。
そこでここでは、買取市場で人気の高い版画の有名作家についてご紹介します。
草間彌生
草間彌生は世界的に評価される、日本を代表する現代美術家です。
特徴的な水玉模様や網目の反復、かぼちゃのモチーフなどが有名です。
そして草間彌生は、版画作品も多く制作しています。
彼女の代表的なモチーフであるカボチャを描いたシルクスクリーン・リトグラフ作品、網目模様をモチーフにしたエッチング作品「無限の網」など、草間彌生にしか描けない版画作品は高い人気があります。
世界的に人気の高い作家であるため、草間彌生の版画作品には買取市場でも高い価値が認められています。
棟方志功
棟方志功は「世界のムナカタ」とも称される、日本を代表する版画家です。
画材である木の魂まで感じられる棟方志功の「板画(はんが)」は、国内外で高い評価を受けています。
棟方志功の代表的なモチーフとしては、「⼆菩薩釈迦⼗⼤弟⼦」シリーズに代表される仏や、「⼤⾸」と呼ばれるバストアップの⼥性があります。
買取市場でも仏や女性などの代表的なモチーフの作品は人気が高く、また、棟方志功本人が1枚1枚手で色を入れた裏彩⾊の作品には高い買取価格がつきやすい傾向があります。
東山魁夷
東山魁夷は昭和を代表する日本画家です。
風景画を得意とし、自分自身の心情を自然の中に表現するで世界的に高い評価を受けています。
特に東山ブルーと呼ばれる美しいグリーンやブルーを用いた作品は人気が高いです。
版画作品も多く制作しており、東山ブルーの美しい風景画など、買取市場でも高い価値を認められているものも多いです。
片岡球子
片岡球子は、昭和から平成時代にかけて活躍した日本画家です。
大胆な構図と鮮やかな色使いが特徴で、「日本画に新しい命を吹き込んだ」と高く評価されています。
代表作としては、歴史上人物をモチーフにした「面構」シリーズや、力強い筆致で富士山を描いた「富士山」シリーズなどが知られています。
版画でもやはり富士山を描いたものは多く、買取市場でも人気が非常に高くなっています。
平山郁夫
平山郁夫は、昭和から平成の日本画を代表する作家の1人です。
シルクロードをモチーフにした「シルクロード」シリーズや、寺院をモチーフにした「寺院」シリーズは広く知られています。
版画でも、やはりシルクロードの砂漠をゆくラクダを描いたものが人気で、買取市場でも高い買取価格がつくケースがあります。
加山又造
加山又造は、昭和から平成にかけて活躍した日本画家です。
掛け軸や屏風など様々な作品を手掛けていますが、特に版画作品は国際的な評価を得ています。
加山又造の代表的なモチーフとしては猫が挙げられ、猫がカマキリを見つめる様子が描かれた「猫」は有名です。
版画作品でも動物・花・月などの花鳥風月を描いたものが多く、買取市場で人気を集めています。
高価買取されやすい版画の特徴とは?
版画は美術品買取市場でも人気が高く、作品によっては高価買取の可能性もあります。
では、版画の中でも高い買取価格が付きやすいものとは、どのような特徴のものでしょうか。
高価買取されやすい版画の特徴には、以下のようなものがあります。
- 刷られた枚数が少ない版画
- 有名作家が手掛けた版画
- 保存状態の良い版画
- 鑑定書などの付属品が揃っている版画
刷られた枚数が少ない版画
シルクスクリーンやリトグラフをはじめとした版画作品の希少性に大きく関わってくるのが、「何枚刷られたか」という点です。
先述したエディションナンバーを見て、「△△/〇〇」と書いてある分母の数字が、「何枚刷られたか」を表します。
この数字が少ないほど制作された枚数が少ないということですから、その分希少性が高くなります。
市場に流通する数が少なくなりますから、買取価格も高くなりやすいと言えます。
有名作家が手掛けた版画
上でご紹介した草間彌生・棟方志功などの有名作家・人気作家の手掛けた版画作品は買取市場でも需要が高く、その分買取価格も高くなりやすいと言えます。
日本人作家 | |
---|---|
草間彌生 | 棟方志功 |
東山魁夷 | 片岡球子 |
平山郁夫 | 加山又造 |
奈良美智 | 浜田知明 |
千住博 | 藤田嗣治 |
池田満寿夫 | 村上隆 |
絹谷幸二 | 小倉遊亀 |
山下清 | 駒井哲郎 |
外国人作家 | |
---|---|
アンディ・ウォーホル | クリスチャン・ラッセン |
ジェームス・リジィ | ジャン・ピエール・カシニョール |
パブロ・ピカソ | ポール・アイズ・ピリ |
ロイ・リキテンスタイン | マルク・シャガール |
この表に名前のあるような有名作家の版画であれば、作品の保存状態などにもよりますが、高い買取価格がつく可能性があるでしょう。
もちろん、ここに名前のない作家の作品であっても高く買取される可能性はあります。
お持ちの版画の具体的な価値については、バイセルの無料査定で確かめてみてください。
保存状態の良い版画
版画を含む絵画の買取では、保存状態の良し悪しによって買取価格が大きく左右されます。
たとえば有名作家の作品で保存状態の良いもの(制作当時の状態をなるべく保っているもの)であれば、買取価格は高くなりやすいでしょう。
反対に、シミ、シワ、カビ、傷、破れ、タバコの臭いがあるなど保存状態が悪いと、その分だけ買取価格が下がってしまう可能性があります。
より高く売るためには、直射日光や湿気を避ける、箱に入れて風通しの良い場所で保管するなど、作品の状態を保つための工夫をしてあげることが重要です。
鑑定書などの付属品が揃っている版画
版画など絵画の買取では、作者のサインやエディションナンバーに加えて、鑑定書・保証書といった作品の価値を示す付属品の有無が重要な役割を果たします。
鑑定書や保証書があることによって買取市場における信頼性が増し、多くの需要を集められることでより高い価格での買取につながる可能性があります。
また、「業界で信頼されている専門店で購入した」「〇年△月に××博物館に貸し出した」など、作品の来歴を示す記録がある場合にも、同じく買取市場における信用に繋がります。
作品に鑑定書、保証書、来歴の記録などの付属品がある場合には、作品本体と併せて大切に保管しておきましょう。
版画を売るなら美術品の買取実績豊富な買取業者を選ぼう
版画には有名作家の手掛けた作品など、価値の高いものも多いです。
そんな価値ある版画作品を売るなら、美術品の買取実績豊富な業者に依頼するのがおすすめです。
版画などの絵画を適正な価格で買取するためには、作家・制作年代・作品の希少性・保存状態・付属品の有無など様々な要素を正確に見極められる必要があります。
版画作品の価値を適正に判断するというのは、専門知識を持った買取業者でなければ非常に難しいことなのです。
買取業者選びを間違えてしまうと、せっかくの価値ある版画も、本来の価値に見合った価格で買取してもらえない可能性があります。
その点、美術品の買取実績豊富な業者なら、それだけ多くの人に選ばれており、査定経験も豊富ということになります。
安心して利用できるでしょう。
版画を売るなら買取実績豊富なバイセルへ
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バイセルの査定士は、高い専門知識と豊富な査定経験を生かして、版画1点1点の価値をしっかりと見極め、正確に鑑定します。
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こんな状態でも査定してもらえる?版画買取のQ&A
版画を含む美術品の買取には分かりにくい点も多く、特に初めての人にとっては疑問点はつきものかもしれません。
ここでは版画の買取に関して、よくある質問をQ&A形式でご紹介します。
サインの入っていない版画でも見てもらえる?
版画にサインが入っていないと、有名作家の作品ではなく、すなわち価値がつかないのではないかとお思いになるかもしれません。
たしかに、有名作家のサインが入っていることで価値を証明できることはあるのですが、「サインが無ければ売れない」というわけではありません。
実際に、人気作家の中にも自身の版画作品にサインを入れていない人物もいます。
バイセルの査定士がどのような作品であるか1点1点しっかりと見させていただきますので、サインが無い版画でもまずはお問合せください。
作家名や作品名など詳細が分からない版画も査定してもらえる?
親族や知人から譲り受けたものなどで、「誰の何という作品か分からない」といったケースも珍しくありません。
そのような場合でも、バイセルなら専門知識を持った査定士が1点1点どういう作品であるかを見極め、適正な価値を判断いたします。
詳細が分からない版画でも気兼ねすることなく、まずはバイセルにご相談ください。
変色や汚れがある版画でも見てもらえる?
保存状態は版画の買取において重要なポイントですが、変色や汚れがあるからといって全てが買取不可になるわけではありません。
極端に汚れている場合は買取が難しい場合もあるのですが、実際に買取価格がつくかどうかは作品の人気と汚れの程度のバランスによります。
多少の汚れがあっても買取価格がつくものもありますので、まずはバイセルの無料査定で価値をお確かめください。
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