
井上萬二(まんじ)は人間国宝に認定され、紫綬褒章も受章するという偉業を成し遂げた陶芸家です。
独力で白磁(はくじ)の世界を開拓してきた井上萬二は、白磁の第一人者の名にふさわしい数々の実績を積み重ねてきました。
骨董品に精通している人であれば、井上萬二の名を知っている人もいるのではないでしょうか。
井上萬二作品の買取を考えている方は、相場や買取方法を知りたいところです。
今回の記事は井上萬二作品の買取相場、買取方法、そして高く売るためのポイントをご紹介します。
白磁の陶芸家「井上萬二」とは

1929年に井上萬二は佐賀県有田町の窯元(陶磁器を作る工房)で生まれました。
1944年に井上は軍人を志して、15歳で海軍予科練の練習生になりました。
翌年に海軍を復員した井上は、父親の勧めで有田焼の名窯・酒井田柿右衛門の元で働き始めます。
その後、1958年に初代・奥川忠右衛門の衝撃的な技に出会い、門下生となって白磁やろくろの技法を学びます。
白磁とは、白い素地に光沢を出すための釉薬(うわぐすり)をかけて、高温で焼成した磁器の総称です。
1958年、井上は29歳で酒井田柿右衛門を退社し、県立有田窯業試験場の技官を務めます。
並行して独学で磁器の形を整える成形(せいけい)や、釉薬(ゆうやく)の研究をしながら、伝統的な白磁制作の技法を高めていきました。
井上萬二は、生涯にわたって数々の展示会で受賞を勝ち取ってきました。
独学に励んでいた期間にも地元の展示会や、日本伝統工芸展で文部大臣賞などを受賞しており、陶芸家として邁進し続けます。
1969年に井上はアメリカ・ペンシルバニア州立大学で、有田焼の講師として学生に指導しました。
アメリカでの経験が大きな糧になった井上は、日本のみならずドイツやハンガリーの展示会にも出品し、そして2002年にはモナコ国王の在位45年記念の展覧会を開いて高い評価を得ました。
井上は今までの功績が評価され、1995年に重要無形文化財「白磁」保持者として認定されました。
さらに1997年には紫綬褒章を受章し、第一線で活躍する陶芸家としての地位を築きます。
井上萬二は制作をする傍ら、ニューメキシコ州立大学の学生に向けて伝統工芸の指導を務め、日本とアメリカを合わせて500人以上の教え子に恵まれました。
白磁の制作において確固たる美意識を確立した井上は、89歳になった今でも白磁の世界に没頭し続けています。
井上萬二の白磁に対する想い
井上萬二は「白磁こそが私の原点」と言い切り、徹底的に白磁の造形美を表現しています。
自身が追及する白磁は一点の濁り、一点の歪みも許さないほどです。
井上は白磁を美しく見せるため、表面に様々な技法を試した時期もありました。
しかし、初めて開いた個展で完璧な作品に「色」はいらないと気づき、本当の美しさを造形で表現し、本当に美しいものだからこそ「無色」で残すべきだと心に決めたと言われています。
ここでは、井上萬二の座右の銘である「名陶無雑(よい焼物には雑味や雑念がないという意味」を表現した有名な作品とその特徴を紹介します。
井上萬二の有名な作品
「白磁渦文花瓶」は、白磁の特徴である艶のないマットな質感の作品です。
この作品は下に行くほど形が広がっており、表面には「波」のような線が入っています。
井上が徳島県の鳴門(なると)を訪れた際に見た渦潮から着想を得て作られました。
2010年に作られた「白磁黄緑釉公孫樹文耳付花瓶」は、ろくろを仕上げた後に花瓶の両端に耳を付けた作品です。
花瓶の下半分を黄緑色を塗り、その上に緑色の扇のような彫りを入れています。
同じく2010年に作られた「白磁瓜形壺」は、ろくろを仕上げた後、柔らかいうちに指で薄く線を入れた作品です。
井上は丸い壺に線を入れることで、瓜の形に見えるようにしました。
井上萬二作品の買取相場

井上萬二の作品は評価も高く需要も十分にあるため、中古市場での価値が高いです。
買取相場は作品の保存状態や種類、大きさによって違いますが、これらの条件が揃えば高額買取となる可能性が高いでしょう。
「白磁緑彫文花瓶」は60,000円、「白磁彫文壺」100,000円で買い取られた事例があり、買取相場は数万円から数十万円です。
井上萬二作品の買取方法

井上萬二作品を買取に出すには、以下の3つの方法があります。
・リサイクルショップを利用する
・ネットオークションを利用する
・骨董品専門の買取業者を利用する
高価な買取金額が予想できる作品ですから、買取方法はしっかりと選びましょう。
リサイクルショップを利用する
リサイクルショップは陶器も買取の対象にしている店舗が多く、井上萬二の作品も買い取ってくれる場合があります。
しかし、リサイクルショップですと芸術性の高い骨董品を売るには適していない恐れがあります。
なぜなら井上萬二作品を含む骨董品の査定は、買取市場における需要のある作品かどうか、保存状態は良いか、どの付属品が付いているかなどを熟知していないと、妥当な買取金額を出すのは難しいからです。
リサイクルショップでは、骨董品も日常的に使う食器や陶器と見なされてしまい、芸術的な価値を考慮して査定をしてくれる可能性は低いです。
井上萬二作品が低く買い取られてしまうのを避けたい人は、他の買取方法を選びましょう。
ネットオークションを利用する
井上萬二の作品はネットオークションでも売却できます。
オークションには、良質な骨董品を落札しようと常に目を光らせている愛好家が多いです。
そのため、井上萬二の作品を出品するタイミングが良ければ、高値で落札される可能性があるでしょう。
しかし、ネットオークションは出品者が骨董品や井上萬二作品の価値を見極める知識がないと、設定した落札希望価格で落札してもらうのは難しいです。
作品の保存状態が良くて付属品も揃っているのに、作品の本来の価値よりも低い価格を設定してしまい、落札されてから後悔するかもしれません。
オークションで井上萬二作品を売却したいけど、骨董品の知識がなくて不安な方は別の売却方法を選びましょう。
骨董品専門の買取業者を利用する
骨董品の知識がない人や買取方法にお悩みの方は、骨董品専門の買取業者に査定をしてもらうことをおすすめします。
骨董品を専門にする買取業者は、井上萬二作品を含む芸術作品に幅広い知識のある査定員が在籍しており、さらに査定実績も豊富です。
買取金額は査定員が「井上萬二作品をどのようにして手に入れたか」「それを証明するものはあるか」「保存状態」「中古市場でどの程度の需要があるか」「作品の特徴」などを見て出します。
このように、査定員は査定に必要な情報を揃えた上で買取金額を出すため、リサイクルショップよりも信頼性が高いです。
井上萬二作品を買取に出すのであれば、骨董品に対する正しい知識を持つ買取業者に査定をしてもらいましょう。
井上萬二作品を高く売るためのポイント

井上萬二作品を高く売るには買取方法を選ぶ他にも、査定金額がお得になる以下のポイントを知っておく必要があります。
・付属品も一緒に売る
・保存状態をきれいにする
・骨董品専門の買取業者にある「出張買取」サービスを使う
・複数の買取業者で相見積もりを取ってもらう
付属品も一緒に売る
骨董品を買うと付属品が付いてきます。
付属品の種類は、作家本人のサインや印がある桐でできた共箱(ともばこ)、作品を収める共箱と一緒に付いてくる共布(ともぎれ)、また品物によっては栞、作家の紹介文が書かれた紙などがあります。
共箱にあるサインは、作者本人がその作品を制作したものという証明になります。
共箱は蓋の甲に「作品名」と「作家名」が書かれているものや、蓋の甲に「作品名」、蓋の裏に「作家名」が書かれているものなど、いくつかのパターンがあります。
また、人間国宝に認定されている井上萬二の作品は、付属品が揃っていなくても高値で買い取ってくれる可能性があります。
しかし、付属品が揃っていれば中古市場での需要が高まり、買取金額が高くなることが予想できます。
井上萬二作品の価値を下げたくないのであれば、査定前に付属品を探しておきましょう。
保存状態をきれいにする
査定員は様々な視点で骨董品を査定をしますが、その中でも「保存状態の良し悪し」はとりわけ重要視します。
井上萬二の作品を高く買い取ってもらいたいのであれば、査定前に陶器をお手入れしておきましょう。
井上萬二の作品は花瓶や壷が多いです。
作品を部屋に飾ったままにしておくと、表面に汚れやホコリが付着していまうので、乾いた柔らかい布で拭き取っておきます。
さらに、花瓶や壷にヒビ、キズ、デザインの擦れ、欠けがあると査定金額が下がってしまう恐れがあります。
このような状態にならないように、作品に付着した汚れを拭いたら清潔な箱にしまって、安全な場所に保管をしておきましょう。
骨董品専門の買取業者にある「出張買取」サービスを使う
出張買取サービスとは、査定員が利用者宅に訪問して品物を査定し、利用者が納得したらその場で買取金額を現金で受け取れるものです。
井上萬二作品は陶器でできています。
出張買取サービスを使えば、査定をしてもらうために買取店舗に持ち運ぶ手間や、落として割らないように注意を払う負担を軽減できます。
複数の買取業者で相見積もりを取ってもらう
骨董専門の買取業者は作品に対する専門知識はあっても、査定価格の設定方法や査定員による査定の丁寧さ、買取実績はそれぞれ違います。
骨董品専門の買取業者の中でも高く売れる業者を選びたいなら、複数の業者から相見積もりを取ることをおすすめします。
相見積もりを取れば各買取業者の相場がわかり、他にも査定員の対応やサービス内容はわかりやすさを比較すると、納得して業者を選べます。
井上萬二作品を高く売るなら骨董専門の買取業者で査定をしてもらおう

人間国宝に認定された陶芸家・井上萬二の作品は、買取市場での価値が高いです。
骨董品はリサイクルショップやオークションで売却するのは避けましょう。
骨董品は査定ポイントが多いため、専門知識を持った査定員ではないと作品の価値に見合った買取金額が出せない恐れがあります。
井上萬二の作品を高く売りたい人は、骨董品専門の買取業者に査定をしてもらいましょう。
査定の前には必ず作品の付属品を揃えて保存状態を良くしてから、複数の買取業者から相見積もりを取ると納得して売却先を決められます。
複数の買取業者を選ぶ際に出張買取サービスに力を入れている業者を選べば、骨董品の割れや破損を心配せずに売却できるでしょう。