たとう紙に入っている薄紙は必要?着物を綺麗に保管するための使い方とは
着物を綺麗に保管するために必要不可欠なアイテムの1つに「たとう紙」があります。
たとう紙とはどのような物で、どういう役割があり、どのように使うのでしょうか。
また、たとう紙に入っている薄紙は、着物を保管する際に必要なものなのでしょうか。
たとう紙の概要や役割に加えて、薄紙は必要なのか、たとう紙の使い方や交換時期、たとう紙の種類、たとう紙の購入方法、ブランドオリジナルのたとう紙などについてご紹介します。
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目次
たとう紙とは
たとう紙とは、着物を収納する時に使う専用の包み紙です。
元々は貴族のような上流階級の人々が着物を贈り合う際に、プレゼントに包装紙を付けるような意味合いで紙に包んでいたことが由来とされます。
その文化が広まって、呉服屋が仕立て上がった着物をお客さんに渡す時にも同様の包み紙を付けるようになり、一般に広まったようです。
たとう紙の役割
たとう紙には、大きく分けて3つの役割があります。
- 着物の湿気をとってカビの発生を防ぐ
- 着物をホコリから守る
- 着物にシワがつくことを防ぐ
着物を除湿してカビの発生を防ぐ
着物は湿気に弱く、たんすや収納ケースに入れて長く保管していると、湿気が溜まってカビが発生してしまう可能性があります。
定期的に風通しをするなどして除湿する必要がありますが、着物を頻繁に取り出して風通しをするのは時間も手間もかかりますよね。
そこで、通気性が高く除湿効果の高いたとう紙で着物を包んで保管することで、着物に湿気が溜まりにくくなるのです。
大切な着物を収納するときのカビ対策として、たとう紙は力を発揮します。
その他、着物のカビを防ぐ方法については以下の記事が詳しくなっています。
着物をホコリから守る
室内には、衣服・布団・カーテン・絨毯などから出る小さな繊維が見えないホコリとなって空気中に舞っています。
着物をタンスや収納ケースに入れたとしても、知らず知らずのうちにそのようなホコリが付いてしまうことは避けられません。
着物や帯を1枚ずつたとう紙に包んで保管することにより、ホコリから守ってくれるという役割を果たします。
着物にシワがつくことを防ぐ
着物同士を何枚も重ねて収納する際、着物同士の摩擦によって畳んだ際の折り目がズレてしまい、それがシワの原因となってしまう場合があります。
例えば本畳みの場合には右袖が外側に向くため、袖の部分はシワになりやすい箇所となってしまいます。
着物を一着ずつ丁寧にたとう紙に包んで収納すると、着物を保護してくれるのに加えて摩擦を軽減し、着物同士を重ねて保管してもシワがつきにくくなります。
たとう紙の素材
たとう紙は和紙で作られているものが多いですが、代表的な素材は楮(こうぞ)・雁皮(がんぴ)・三椏(みつまた)などの木が挙げられます。
これらの木から作られる和紙は繊維同士の結合が強く、張りが強い特徴があります。
そして重要なのが、楮・雁皮・三俣からできた和紙は繊維同士に隙間が多く、通気性が高い紙質であるという点です。
通気性が着物のカビを防ぐうえで重要であり、たとう紙に適した素材となっています。
たとう紙は地域によって呼び方が違う
この記事では「たとう紙」という表記で呼び名を統一していますが、じつはたとう紙は地域によって呼び方や表記の仕方が異なります。
呼び方としては「たとうし」「たとうがみ」「たとうかみ」「たたみがみ」などがあり、漢字表記としては「畳紙」「帖紙」「多当紙」などがあります。
また京都など近畿地方では「文庫紙」や「キモノ紙」と呼ばれることも多いです。
京都では「たとう紙」というと着物を着替える時に下に敷く「衣裳敷」のことを指す場合もあるようです。
たとう紙の薄紙は保管に必要ない
呉服店などで着物を購入するとたとう紙に包んで渡してくれることが多いですよね。
その際、たとう紙の中に薄紙が入っていることが多いのですが、この薄紙は着物を保管するのに必要なものなのでしょうか。
実はこの薄紙は、着物を受け渡す際に見栄えを良くするための包装紙のようなもので、保管には必要ありません。
むしろ、この薄紙には糊がついており、その糊を餌とする虫を引き寄せてしまうことがあります。
着物を保管する上で虫食いは大敵ですから、着物を持ち帰ったあとで保管する際には、たとう紙の薄紙は外しておきましょう。
たとう紙の使い方:保管の手順
たとう紙の役割や薄紙の扱いが分かったところで、具体的な使い方を見ていきましょう。
たとう紙を使って着物を保管する際には、事前に着物の手入れをしておくのがおすすめです。
具体的な使い方、手順は以下の通りです。
- 着物用ブラシでホコリを払う
- ハンガーに吊るして一晩干す
- たとう紙に着物を包む
- 1枚の着物に対して1枚のたとう紙を使う
着物用ブラシでホコリを払う
着物を保管する前に、表面についたホコリをブラシで落としましょう。
その際、固いブラシを使うと着物を傷める原因になってしまいますので、着物用のものを使うのがおすすめです。
ホコリが残っていると虫食いの原因になってしまいますから、丁寧に払ってあげましょう。
着物用ハンガーに吊るして一晩干す
たとう紙に包む前に着物の湿気をしっかりと取っておくため、着物用ハンガーに吊るして一晩ほど着物を干してください。
袷(あわせ)の着物の場合、2~3日以上など長く干していると表の生地と裏の生地がズレてしまうこともあるので注意が必要です。
なお、着物の内側の湿気が気になる場合には、着物を裏返してもう1度干してあげることも効果的です。
たとう紙に着物を包む
ホコリと湿気が取れたらたとう紙で包みます。
たとう紙を用いて着物を包む手順は以下の通りです。
- 1 . 着物をたとう紙の中央に置く
- 2 . たとう紙の左右を内側に折り、内紐を結ぶ
- 3 . たとう紙の下側を折り上げる
- 4 . たとう紙の上側をかぶせる
- 5 . たとう紙の紐を結ぶ
大切な着物を綺麗に保管するためにも、たとう紙を使った正しい保管の仕方を押さえておきましょう。
1枚の着物に対して1枚のたとう紙を使う
たとう紙の使い方の重要なポイントとして、「1枚の着物に対して1枚のたとう紙を使う」というものがあります。
着物と長襦袢や帯などをセットで購入した場合など、セットで着用するためにまとめて保管しておきたくなるところですが、1枚のたとう紙の中に複数のアイテムを入れて保管するのはおすすめできません。
例えば長襦袢にカビや虫食いなどのトラブルが発生した場合、同じたとう紙の中に保管していると、そのトラブルが着物や帯にもうつってしまうという危険があります。
1枚ずつ別々のたとう紙に入れて保管しておけば、たとう紙が壁となって着物や帯の被害を食い止めてくれるでしょう。
費用もかかるのですが、やはり着物の保存状態のことを考えるならば、惜しまずに「1枚の着物に対して1枚のたとう紙」というのがおすすめです。
たとう紙はいつ交換すれば良い?
長く使っているたとう紙が、茶色く変色してしまっているような様子を見たことがある方も多いかもしれません。
たとう紙が劣化してしまうと着物を保護する力も落ちてしまいますから、定期的に交換してあげることが必要です。
では、たとう紙はどのようなタイミングで交換すれば良いのでしょうか。
たとう紙の効力は1~2年
たとう紙の吸湿性は、一般的な使用環境下では2年ほどで失われると言われています。
そのため、十分な吸湿効果をキープしたいなら、たとう紙は1~2年ほどで交換してあげるのが良いでしょう。
たとう紙を交換する際に、着物や帯をたとう紙に収める前にたとう紙の表面に日付を記入しておけば、交換のタイミングの目安を確認することが出来ます。
たとう紙にシミが出たら交換のサイン
たとう紙の効力が続く期間は使用環境などによっても異なりますので、期間だけでなく状態を見ながら交換をすることも重要です。
たとう紙が茶色に変色していたり、斑点状のシミができていたりするのは、たとう紙の性能が落ちているというサインになります。
これらのサインが確認出来たら、たとう紙の替え時と言えるでしょう。
湿気の多い季節を避けて交換を
たとう紙を交換する際には、同時に虫干しを行って溜まった湿気を飛ばしてあげることも重要です。
そのため、たとう紙の交換のタイミングとしては、「春や秋の湿度が低い時期の晴れた日」が良いと言われています。
そうすることによって、「たとう紙の効力が高い状態で梅雨の時期を迎える」「梅雨や台風の時期を乗り越えたたとう紙を交換してあげる」ということができ、十分な吸湿効果を発揮してくれるでしょう。
例えば「毎年5月(または10月)に交換する」という風に決めておけば、たとう紙の経年劣化も防ぐことができるでしょう。
たとう紙の種類
たとう紙には、紙質や用途などの違いによっていくつかの種類があります。
ここでは、「紙質」「サイズ」という観点からたとう紙の種類についてご紹介します。
たとう紙の紙質の種類
たとう紙の紙質の代表的なのはやはり和紙ですが、その他にも中性紙・クラフト紙などのたとう紙もあります。
和紙のたとう紙
着物の保管用に昔から用いられてきたのが、美濃和紙など日本の伝統的な製紙方法で作られた和紙のたとう紙です。
素材は楮(こうぞ)・雁皮(がんぴ)などの天然の原料として作られるものが一般的で、一枚で数千円という値段がつくこともある高級品です。
吸湿性や耐久性が高いため、大切な着物を保管するときや、礼服など着る機会が少ない着物を長期間保管するのにも適しています。
中性紙のたとう紙
中性紙は中性か弱アルカリ性域で工業的に作られた紙です。
和紙よりも安価で耐久性と通気性もあり、使い勝手のよいたとう紙だと言えるでしょう。
和紙に比べれば除湿効果は低いため、定期的に風通しをするなどの工夫をしてあげる必要はありますが、「たとう紙を使いたいが価格が抑えたい」という場合におすすめです。
クラフト紙のたとう紙
クラフト紙は、パルプ紙と呼ばれる非常に安価な洋紙です。
着物を大量に持っていて、たとう紙の費用をできるだけ抑えたいという人に向いたたとう紙だと言えるでしょう。
クラフト紙のたとう紙はコストの面では非常に魅力的ですが、和紙や中性紙に比べて除湿効果は低いです。
クラフト紙のたとう紙を使うのであれば、別途除湿剤などのアイテムを併用するのがおすすめです。
たとう紙のサイズの種類
たとう紙は、用途に応じて様々なサイズのものが販売されています。
最も一般的な着物用たとう紙のサイズは約83cm×約36cmです。
この表を基準に、サイズや畳み方などからご自身に合ったたとう紙を選ぶと良いでしょう。
また、着物の他にも羽織や帯などを包むのに適したサイズのたとう紙もありますので、用途によって選んでみてください。
種類 | サイズ | 用途 |
---|---|---|
着物用(二つ折り) | 約83cm×約36cm | 身丈を半分に畳んで保管するのに最適 |
着物用長尺(二つ折り) | 約87cm×約36cm | 身丈が長い着物を半分に畳んで保管するのに最適 |
着物用(三つ折り) | 約64cm×約36cm | 身丈を1/3に畳んで保管するのに最適 羽織や袴の保管にも使える |
帯用 | 約56cm×約36cm | 帯の保管に最適 |
たとう紙の購入方法
着物を購入した際の最初の1枚のたとう紙は、呉服屋さんで着物を購入したときに付いてくることが多いです。
では、交換用のたとう紙はどこで購入すれば良いでしょうか。
分かりやすいのは、「呉服店でたとう紙のみを購入する」という方法です。
保管したい着物や帯などの種類やサイズを伝えると、最適なたとう紙を案内してくれるでしょう。
ほかには、着物専門のネットショップや楽天市場などの大手通販サイトなどでもたとう紙を購入することができます。
たとう紙は結構かさばるものなので、数多く欲しいなどで持ち運びが大変な場合には、ネットショップで購入する方法も便利です。
有名ブランドのたとう紙は着物買取で重要になる場合も
着物買取という観点から見ると、たとう紙は第一に「着物の保存状態を良好に保つ」という点で重要です。
そして時には、たとう紙が着物の品質を証明するのに役立ってくれることもあるのです。
それは、有名ブランドオリジナルのたとう紙です。
志ま亀などの有名着物ブランドの一部では、販売した着物をブランドオリジナルデザインを施したたとう紙に入れて渡してくれるところがあります。
有名ブランドの着物には偽物が出回ることもあるため、本物であることを証明するための1つの手段として、オリジナルのたとう紙を使用しているのです。
そのため、たとう紙が「有名ブランドの価値ある着物である」ことを証明してくれることがあるため、着物買取の際にも重要になる場合があります。
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