大島紬よりも価値が高いといわれる薩摩絣とは?その価格や買取のポイントをご紹介

2024.12.06

着物買取 コラム
大島紬よりも価値が高いといわれる薩摩絣とは?その価格や買取のポイントをご紹介
あまり着ていない薩摩絣の着物を持っています。売ったらいくらになりますか?
薩摩絣は買取市場でも需要が高い着物ですが、保存状態や証紙の有無などによって買取価格が変わります。詳しくは専門知識を持ったバイセルの査定士が一度拝見いたしますので、まずはバイセルにお問合せ下さい。
祖母が昔着ていた薩摩絣の着物を譲り受けました。価値ってありますか?

薩摩絣は宮崎県都城市の綿織物で、日本の最高峰といえるほどの品質の高さを誇ります。

鍛錬を重ねた職人が工程を積み重ねることで生み出される薩摩絣の風合いは着物愛好家から人気を博し、その希少性ゆえに価格も高くなっています。

そして薩摩絣は、その品質と希少価値ゆえに買取市場でも人気となっています。

薩摩絣の概要や特徴、製作工程、販売価格、着物買取市場で高く売れやすい薩摩絣の特徴などについてご紹介します。

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※本記事の内容は、必ずしも買取価格を保証するものではございません。予めご了承下さい。

薩摩絣とは?

薩摩絣とは、宮崎県都城市(みやこのじょうし)で生産されている綿織物です。

かつては、琉球絣の流れをくむ素朴なものでしたが、現在では打って変わって最高の綿織物として精緻をこらしています。

その結果、世界三大織物の1つにも数えられる大島紬の気分を木綿で味わえる、という趣のお洒落着として知られるようになりました。

薩摩絣は木綿の中でも一番細い糸(80番双糸)を使って織られるのが特徴です。

熟練の職人の高度な技術によって織り上げられた薩摩絣は、絹のような光沢と独特な風合いを持つ織物に仕上がります。

専門家でもない限り見た目や触り心地だけで綿織物だと見抜くのは難しいでしょう。

高級着物である大島紬や結城紬を着尽くした方が最後に求める着物としても有名で、「綿のダイヤモンド」とも呼ばれる日本最高峰の織物となっています。

薩摩絣の功労者である永江明夫と東郷織物

薩摩絣の起源は解明されていませんが、1609年に薩摩藩の藩主である島津義久が琉球に侵攻した際の献上品であったと言われています。

当時は琉球で製作されていたものの、薩摩藩を介して流通していたために薩摩絣の名で知れ渡り、庶民の着物として人気を博しました。

その後徐々に衰退していった薩摩絣ですが、その状況が大きく変わったのが戦後まもなくです。

永江伊栄温(ながえいえお:締機の工法を完成させた人物)の三代目に当る東郷治秋と、薩摩絣の発明者である永江明夫の二人は、1947年に「東郷織物」創設します。

そこで永江明夫は15年以上をかけて薩摩絣の研究に没頭し、絹に負けない丈夫な、理想の薩摩絣を完成させたのです。

永江明夫が大島紬の製法を駆使して新たな薩摩絣を生み出したことにより、薩摩絣は再び脚光を浴びることとなりました。

武者小路実篤が東郷織物に来訪した時には感銘を受け、色紙に「薩摩絣 手織絣 誠実無比」との言葉を記しました。

商標として使っています。

現在も東郷織物は当時の伝統を継いだ薩摩絣を忠実に作っており、実篤の言葉は商標として使われています。

薩摩絣の製作工程

薩摩絣の製作工程は大島紬に近く、80番手のエジプト綿の双糸という細い糸を使って織り上げられます。

薩摩絣に用いられる木綿糸は滑りにくくて切れやすく、水につけると縮む性質があって色落ちもしやすいため製作には熟練の技術が求められます。

薩摩絣の製作は、以下のような工程で行われます。


  • ①コンピューターを使って図案を作成する
  • ②締機(しめばた)を使って絣括りの作業を行う
  • ③括った糸を染料に何度も浸して絣糸を染める
  • ④染め上がった絣糸をほどいて水洗いする
  • ⑤丁寧に織り上げる


「絣括り」とは、色を付けたい部分とそうでない部分を分けるために糸を巻きつけてしばる作業のことです。

括った糸を染色したのち、しばった部分をほどくとそこだけ染まっておらず、それが絣の柄になります。

80番手のエジプト綿の双糸は絹に比べて滑りが悪く、織るのにも熟練した技術が必要です。

このような工程が、最初の図案作成以外は全て職人の手作業で行われます。

そのため大量生産はできませんし、1枚の反物が仕上がるまでには長い時間を要します。

このようにして精魂込めて製作されるゆえに薩摩絣は「綿のダイヤモンド」とも称され、多くの方から愛されているのです。

薩摩絣は非常に価値の高い織物

薩摩絣はこのように、卓越した技術と大変な手間暇がなければ出来ない織物です。

大量生産することもできず、商売として作り続けるのは難しいものがあります。

その結果、薩摩絣の工房は昔よりも大きく減り、現在は東郷織物が独占して作っている状態です。

薩摩絣は一反織るのに半年を要すると言われ、年間で80反ほどしか織ることができません。

絹製の大島紬などにくらべても手間がかかり、生産数は限られてしまいます。

そのため店頭でもなかなか手に取れないほど入手困難な織物となっており、品質の良さと希少性の高さによって非常に価値の高い織物となっているのです。

薩摩絣の販売価格はどれくらい?

品質の良さと希少性の高さから非常に価値の高い織物となっている薩摩絣ですが、実際の販売価格はどのようになっているでしょうか。

ものによって価格の幅はありますが、インターネット上の着物販売サイトなどでは、薩摩絣の反物で10万円ほど~100万円を超えるものまで見られます。

着物の形になっているものでも、10万円ほど~30万円ほどの販売価格のものが見られます(2024年9月現在)。

薩摩絣は着物買取市場でも価格が高い

品質と希少性が高く、販売価格も高くなっている薩摩絣は、着物買取市場でも人気の高い織物です。

そして、その品質と希少性ゆえに買取市場での価格も非常に高くなっています。

ここではその中でも、着物買取市場において特に高い価格で買取されやすい薩摩絣の特徴についてご紹介します。

  1. 保存状態の良い薩摩絣
  2. 箱や証紙などの付属品が揃っている薩摩絣
  3. サイズの大きい(身丈が長い)薩摩絣

保存状態の良い薩摩絣

薩摩絣に限らずですが、着物の保存状態は買取価格に大きく影響します。

着物にシミ・シワ・虫食い跡・黄ばみ・汚れがある、カビが発生してしまっているなどすると、価値の高い薩摩絣であったとしても買取価格は下がってしまうでしょう。

絹の着物に比べれば湿気などにも強い薩摩絣ですが、長年保管しているうちにシミや変色が発生したり、湿気によるカビや経年劣化が出てくる場合もあります。

薩摩絣などの着物を良い状態に保つためには、着用後には汚れを落としておく、湿気がたまらないように定期的に虫干しをするなど、普段からのお手入れが重要です。

着物クリーニングはおすすめできない場合もある

薩摩絣は綺麗な状態の方が高く売れやすいと書きましたが、だからといって買取の前に着物クリーニングに出すのはおすすめできない場合もあります。

確かに、悉皆屋(しっかいや:着物の染めや洗い張りなどを扱っている専門店)に出して洗い張り(着物を反物の状態に戻してから洗い、新たにのりを引いて生地の風合いを蘇らせる洗濯方法)を依頼すれば、着物は綺麗になるでしょう。

しかし、洗い張りには安くない料金がかかります。

汚れ具合などによっては、綺麗になったことによる査定額の上昇分よりも、洗い張りの料金の方が高かったというケースも十分にあり得ます。

そのため、汚れている薩摩絣でもまずはそのままの状態で査定に出してみることをおすすめします。

薩摩絣が傷まないうちに査定に出すのも有効

薩摩絣は綿でできているため、絹製の着物に比べれば湿度や温度の変化に強い特徴があります。

しかしそれでも、自然の素材である以上は、長い期間着用・保管することによる劣化は避けられません。

もし不要な薩摩絣があるなら、傷んでしまわないうちに早めに査定に出すというのも1つの手です。

箱や証紙などの付属品が揃っている薩摩絣

薩摩絣を新品で購入した時には箱や証紙といった付属品がついてくることが多いですが、買取の際にはこれらの付属品も一緒に査定に出すことをおすすめします。

これらの付属品は、着物コレクターにとっては重要なコレクションの一部だからです。

そして証紙は、お持ちの薩摩絣が本物であることを証明するのも助けてくれます。

証紙は反物から着物に仕立てた際に出てきた生地の切れ端に付けられており、作者名、織元、産地、生地の素材などが記載されています。

綿薩摩絣の東郷織物製の証紙には「正藍染(化学染料を一切使わず、天然の藍だけで染めたという意味)」と書かれています。

永江明夫の作品であれば「永江明夫」の縦書きのサインと、武者小路実篤がしたためた「薩摩絣 手織絣 誠実無比 実篤」と書かれた証紙が加わります。

これらがあることで、無い場合よりも高く買取してもらえる可能性がありますので、手元に残っていれば必ず提示するようにしましょう。

サイズの大きい(身丈が長い)薩摩絣

薩摩絣に限らず、着物の買取では大きいサイズの方が需要が高くなりやすいです。

これは、大きいサイズのものの方が、端折ったりリメイクしたりすることによって幅広い背丈・体型の人の需要に応えられるからです。

具体的には、160㎝以上の身丈があると、着物買取市場では人気が高くなりやすい傾向があります。