普段着物で生活に彩りを。着物男子に聞いた着物を着るべき理由
女性だけではなく、男性の着物姿って涼しげで素敵ですよね。男性の皆様は着物についてどのようなイメージをお持ちでしょうか。
着物を着る機会の少ない男性の中には、「堅苦しくて動きにくそう」「着付けが大変そう」「着る場所がない」などのイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし、男性の中にも普段から着物を楽しんでいる方がいらっしゃいます。さらっと着物を着こなしている男性、おしゃれだと思いませんか?
日常生活に着物を取り入れるライフスタイルを”普段着”と”着物”を組み合わせて「普段着物生活」と呼び、SNSで話題となっています。
今回はそんな「普段着物生活」について、着物男子でありフリーランスの管理栄養士として多方面でご活躍されている圓尾和紀(まるおかずき)さんにお話を伺ってきました!
着物男子 圓尾 和紀さん
フリーランスの管理栄養士
- 総合病院勤務を経て2013年に独立。
- ・「食べる」:伝統食の良さを伝える
・「食べない」:ファスティング
の2軸で活動 - ファスティングマイスター、執筆、TV出演など多方面で活躍
※本記事の内容は、必ずしも買取価格を保証するものではございません。予めご了承下さい。
SNSで話題の普段着物とは?
お祝いの席やイベントの際に着るイメージの強い着物ですが、普段着として着物を着る生活とはどのようなものなのでしょうか。圓尾さんの着物生活について聞いてみました。
−−着物に興味をもったきっかけを教えてください
きっかけは食ですね。病院から独立してどういった食事が健康的なのか勉強していく中で、伝統食が一番いいだろうという結論に至りました。 日本の伝統食を勉強していくうちに食文化だけではなく日本文化全般に目を向けるようになり、着物にも興味を持つようになりました。
−−最初に着物に関する知識はどうやって身に付けましたか
まずはインターネットと本で着物の決まりを一通り勉強しました。いまは着付けの方法を動画で紹介しているサイトがあるので嬉しいですね。 本で見ても折り紙の折り方を見ているみたいですが、動画はすごくわかりやすかったです。
あとは呉服屋さんの方と仲良くなって、直接教えてもらったりして知識を付けていきました。
−−着物の着付けには時間がかかるイメージですが、普段はどのくらいの時間で着付けをされていますか
最初に襦袢と長着をまとって帯を締めるだけなので、3分くらいで済みます。むしろシャツ着てネクタイ締めていたら洋服のほうが時間がかかるかもしれませんね。
−−普段、着物はどこで購入されていますか
呉服屋さんかインターネットです。中古のものですと浅草の古いお店で買ったり、たまにゲリラ的に開かれる市に行って買ったりしています。
−−お手入れについてはどうしていますか
基本的に普段着の着物は洗濯機で洗える綿か麻のものを買っています。なので畳んでネットに入れて洗濯機で普通に洗っています。絹の着物はクリーニングに定期的に出すようにしています。
「着付けやお手入れは大変」と思っていましたが、実際にお話を聞いてみると意外と簡単なことに驚きました。生地を選べばお手入れも難しくないですし、慣れてしまえば着物を着るのはまったく面倒ではないようです。
普段着物生活の良さとは?
着物を普段着にすると生活にどのような変化があるのでしょうか。
−−着物を着ることでのメリットはありますか
洋服に比べて着物のほうがゆったりしているのですごくリラックスできます。着物を着るようになってから肩こりがなくなりました。久しぶりに洋服着たときには肩が凝って仕方がなかったです。
歩き方や体の動かし方も変わってきますね。重心が下がって腰から動くようになりました。
あとはとにかく着ていて心地がよいですね。風通しがすごく良くて。よく考えられているなと思います。
−−着物を着るようになってからの印象的な出来事はありますか
最初のころはやはり着崩れや、帯がほどけてきたりしてパニックになりました(笑)駐車場に隠れて締めなおしたこともありますね。
また、着物を着る生活になってから街中で食事をしていると店員さんによく話しかけられます。普段から着物を着ていることや仕事のことなど・・・ありがたいことではありますが、僕にとっては毎日着物なので毎回聞かれると困ってしまいます(笑)
−−日常生活で不便なことはありませんか
袂(たもと)が邪魔になるときはあります。手を洗うくらいなら脇に挟めばそれほど邪魔には感じませんが、作業するときはたすき掛けで袂をしまいます。
料理をするときには袂を全てしまうことのできる着物専用のエプロンを使います。
袂がドアノブに引っかかったりすると世の中が洋服仕様になっているのを感じますね。例えば日本の家屋は引き戸だったはずなのに、西洋化したことで着物で生活するのに不便になっています。
下の袴は分かれているのでやはり動きやすいです。袴をはかないときは下にステテコを履くと動きやすくなりますよ。
※袂(たもと)・・・和服の袖付け部より下の箇所で、袋のように垂れた部分。
−−着物を着ている際の周囲の反応について教えてください
「かっこいいね」「いいね」って言っていただくことが多いので嬉しいです。逆に着物じゃないときに会うと「今日着物じゃないんだ」ってがっかりされることもあります。
毎日着ているのだから間違えるはずないのに、大阪のおばちゃんに突然「(着方が)左前になっていない?」って言われたことがあってびっくりしました(笑)
あと僕、背もたれに当たらないように、帯の結び目を真後ろではなくて若干ずらして着ています。それを年配の方に「帯ずれてるよ」って言われたり。結構着方に関してのそういう反応はありますね。
もちろん何か式典や催事で着るならスーツでも着物でもきちんと着るべきだ思いますけど、普段用の服を着ているときってどうやって着ようが自由じゃないですか。だから普段着として着るときは着物だからってそんなにこだわらなくてもいいと思います。
−−着物を着ていてよかったことはありますか
着物を着ていることによって人とのつながりが増えました。和に興味がある方と知り合ったりとか、外国人に話しかけられたり。ヒカリエで待っていたら外国人に写真撮っていい?って聞かれたりする事もありました。
着物を着た男性同士はレアなので仲良くなれる
−−今後、着物男子は増えていくと思いますか
増えてほしいですね。男性同士だとお互いにレアなのですぐ仲良くなります。僕は友人にも着てほしかったので、何人かは着物の買い物に付き合ったりしたこともあります。
でもなかなか普段から着るかというと少し難しそうですね。男性の方が女性と比べて、着物を着るのは簡単ですし、慣れてしまえばすごく楽なので絶対着たほうがいいと思います。
−−最近はSNSの影響で男性の浴衣姿が増えてきている印象はありますが、着物と浴衣はどういったところが違うと感じますか
大学生の頃、浴衣を着たことがありましたがそこまで感動はなかったです。でも初詣で着物を一式(長着・羽織・草履など)着用したら背筋が伸びるというか、浴衣とは全く別物でした。浴衣はパジャマのようなものなので是非着物を着てほしいです。
−−着物を着用している女性のイメージを教えてください
華やかでいいなと思います。着物自体もそうですし、小物や髪型も変えるじゃないですか。大変だとは思いますがパッと見たときにその佇まいがもう美しいですよね。
着物コーディネートでもっと着物を楽しもう
着物を日常生活に取り入れることで、新しい価値観に触れることができそうです。続いて、着物をもっと楽しむためのアレンジ方法やコーディネートについて伺ってみました。
−−今日の着物コーデのポイントを教えてください
半襟を変えているところです。手ぬぐいを切って自分で縫い付けています。男性はこういったところで柄を見せるくらいしかおしゃれができないので。
今日の着物は結構現代的というか、あまり昔にはない柄の入り方、ラインの入り方をしていて個人的には割とこういうデザインはかっこいいと思います。
そんなに洋服にこだわりはありませんが、和服にしたときにちょっとおしゃれに目覚めたというか。半襟変えてみたりとか、小物探してみたりとか、少し意識は変わったと思います。
−−和服に洋服を取り入れてコーディネートする際のコツや印象に残るエピソードを教えてください
雪駄を夏場ジーンズに合わせて履いたりします。いろいろ工夫して洋服を着物に合わせていた時がありました。
例えば長着の下にパーカー着たりしたのは結構面白かったですね。
あとは書生さんがやっていた、下は袴で、上は中に襟なしのシャツを着る書生スタイルとかやったりしていました。スニーカーも履きますし、雨の日はブーツを履いたりもします。まあこれは150年以上前に坂本龍馬がやっていましたけど(笑)
−−年齢によって、選ぶ着物に変化がでてくると思いますか
男性でもどんどんおしゃれな着物が出ているので、着物の楽しみ方の幅は広がってきていると思います。年齢によって色合いだったり、素材感だったりを分けると面白いかもしれません。
若いときはカジュアルな着物でいいと思いますが、ある程度年齢重ねたらビシッと良い着物で決めたほうがかっこいいですよね。でも逆にそれを若い人がやると何となく衣装っぽくなってしまったり、というのもあると思います。
男性っておじさんになってくると、どうしても流行りの洋服は似合わなくなってしまうけれど、着物だと逆に若者よりおじさんのほうが渋くて絶対かっこいいと思います。
あれは若者には出せない色気なので、着物を着たらもっとモテるのではないかなと思いますね(笑)
−−着用する着物は季節によってどのように変えていますか
着物の素材と下着を変えます。やはり冬は絹の着物にしたり、合わせのもので暖かくしますが、夏場は麻の着物や薄いものに変えます。
正直夏は暑いです。Tシャツ・短パンに比べたらという話になりますが、もし上着を着るなら着物の方が涼しいですよ。
風通しのみ弱点ですが、冬に関しては暖かいです。首元は寒くなるので、僕はいつもマフラーかネックウォーマーをしています。首さえ覆ってしまえばあとは大丈夫です。
−−着物を着始めてから身の回りの小物に変化はありましたか
やっぱり印伝模様などの和のものが欲しくなります。でも、逆に全部和にするよりもちょっと”洋”が混ざっていたほうが現代的に、カジュアルに見えますね。
例えば夏場に麦わら帽子をかぶったり、冬場にマフラーとか手袋をしてみたりだとか。かばんは肩がけのショルダーバックが手が空くのでおすすめです。でも普通にリュックも背負います。
−−お手持ちの着物のなかで最も個性的な着物を見せてください
斉藤上太郎さんのジャージ素材の着物ですかね。見つけた時には「なにこれ!」って思いましたし、周囲からもこの着物を着ていると珍しいようで驚かれます。星の刺繍や裏地のラインが入っていて斬新なデザインです。 あとこれは羽織ですが、オリジナルのマークを友人に頼んで家紋を模して刺繍してもらいました。
−−最後に着物に興味を持っている方にメッセージをお願いします。
日本の伝統衣装の「着物」って文化として廃れているように見えますけど、普段から着物で街を歩いても珍しいだけでおかしくないじゃないですか。
でも海外の伝統衣装は完全に古いものになってしまっていて、おかしいと思います。例えば中国人がチャイナドレス着るとか、イギリス人男性がスカート履くだとか。
でも日本の着物はまだ日常に生きていますよね。洋服も楽しめるし、和服も楽しめるっていう今ならではの良さがあると思います。
着物を着ることで人生の彩りが増えるので、ぜひ一歩を踏み出してもらえたら嬉しいです。
編集後記
着物を普段着とすることは着心地や生活のしやすさにおいて想像以上に快適だとわかりました。 なによりも着物を着ることで普段とは一味違ったおしゃれを楽しむこともできるので、まずはお出かけ着として着物に挑戦してみることをおすすめします。
普段の生活で日本文化に触れることは少ないですが、改めて日本の「和」を見直してみると新しい魅力に気づくことができるのではないでしょうか。
この記事で、少しでも着物を身近に感じてもらい、興味を持っていただけたら幸いです。
普段着物に触れる機会のない筆者も、圓尾さんの着物への熱い情熱を通じ、今後着物を着てみたいと思いました。和を衣生活に取り入れることで価値観を広げることにもつながりそうです。
また、しっかりとご自身の考えをもっており、自分の好きなことに全力で打ち込む圓尾さんのライフスタイルはとても素敵だと思います。着物男子だけではなく、栄養士としての圓尾さんのこれからの活躍にも期待です。
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