
陶芸品は古来から実用品として、日本各地で作られてきました。
現在でも佐賀県の有田焼、愛知県の瀬戸焼、栃木県の益子焼など、有名なご当地焼き物が数多く作られています。
そのような有名なご当地焼き物の1つ、岡山県の備前焼の技術保持者として人間国宝に認定されているのが、藤原雄(ふじわら ゆう 1932-2001)です。
人間国宝・藤原雄の陶芸作品について、買取相場や高く買取してもらうためのポイントをご紹介します。
目次
備前焼の人間国宝・藤原雄とは

藤原雄は、人間国宝にも認定されている岡山・備前焼の作家です。
ここでは藤原雄の経歴と、藤原雄の作風についてご紹介します。
藤原雄の経歴
藤原雄は1932年、同じく備前焼の人間国宝である藤原啓(ふじわら けい 1899-1983)の長男として岡山県に生まれました。
青年時代は文学と音楽に熱中し、大学卒業後は出版社で雑誌記者の職に就きます。
藤原雄を備前焼の世界に呼び戻したのは、父の藤原啓と同時代の陶芸家・小山富士夫(こやま ふじお 1900-1975)でした。
父の看病のために岡山へ戻っていたタイミングでもあり、藤原雄は小山の勧めで父に師事し、備前焼の修行を開始しました。
備前焼作家としての人生をスタートさせた藤原雄はすぐに頭角を現し、20代の頃から数々の陶芸展や美術展で入選します。
そして31歳のときにスペイン・バルセロナの国際陶芸展で大賞を受賞すると、藤原雄の備前焼は世界的に評価されるようになりました。
その後、藤原雄の作品はアメリカ・メトロポリタン美術館やイギリス・大英博物館をはじめとした世界各国の美術館に収蔵されるなど、世界的な評価は不動のものとなります。
また、 画家の棟方志功(むなかた しこう 1903-1975)と共に客員教授を務めたアメリカ・ダートマス大学をはじめ、カナダ・メキシコ・スペイン・オーストラリアの大学でも備前焼の講座を開き、備前焼の普及に貢献しています。
晩年には国内でも 「焼き締め陶公募展」の実行委員長を勤めるなど、焼物文化の発展と後進の育成に尽力しました。
これらの功績が認められ、1996年にはついに重要無形文化財「備前焼」の技術保持者として人間国宝に認定されました。
藤原雄の作風
藤原雄には、生まれつき視力にハンディキャップがありました。
右目の視力は0.03、左目は全く見えていなかったといいます。
それでも父・藤原啓は、普通学校や東京の大学への進学を断固として薦めました。
このことが、「人の愛情を普通人の三倍にも五倍にも感じられる反面、普通のことが三倍も五倍も腹の立つ」と本人が語るほどの強い感受性を育てたのかもしれません。
藤原雄自身が「あたたかさとか、やさしさとか、強さとか、豪放さとか、そういうものを想像させる焼物。
精神的にあたたかみを感じるような焼物。
そういうものをつくらなければいけない」と語っている通り、藤原雄の作品は形の美しさもさることながら、名状しがたいあたたかみに特徴があります。
これは、視力のハンディキャップのために、幼少期から物事を目で捉えるということをしてこなかったからこそ育まれた感性だったのかもしれません。
藤原雄の作風に大きく影響を与えたエピソードとして、このようなものがあります。
まだ若かった頃の藤原雄は、作品の形が整っているかどうかへの拘りを捨てられずにいました。
父の友人でもある芸術家・北大路魯山人(きたおおじ ろさんじん 1883-1959)はその様子を見て、藤原雄が製作中の器の、まだやわらかい口のところをひょいとつまんでみせたといいます。
形の崩れた器から藤原雄が何を感じたかは想像するほかありませんが、藤原雄のその後の作風が決定づけられた瞬間だと言えるのではないでしょうか。
藤原雄は晩年、自らの焼物観についてこう語っています。
「古いと言われても、伝統的すぎると言われても、時代の推移に安易に迎合するのではなくて、時代の変化は感じながらも、しかし、普遍的な美しさと言うか、一万年前も一兆年後も変らない価値をめざしていこう」。
この言葉の通り、藤原雄の作品には流行り廃りに左右されない、人間の心の奥深くに訴えかける力があります。
藤原雄作品の買取相場はどれくらい?

人間国宝にも認定されるなど、世界的に評価の高い藤原雄作品ですが、骨董品買取市場における買取相場はどれくらいになるでしょうか。
実は、藤原雄を含む陶芸作品には、買取相場は明確には存在していません。
陶芸作品はそれぞれが唯一無二の一点物であり、同じ作家の作品であっても買取価格には大きな幅があります。
そして、陶芸作品の素材は土です。
例えば「金を使っているから」というような、素材から類推できる買取相場もありません。
陶芸作品に付けられる価格は、「その作品の技術や芸術性に対して、買い手がどれほどの価値を認めるか」にかかっています。
とはいえ「人気作家の作品は買取市場での需要が高いため、買取価格も高くなることが多い」というような大まかな買取相場はあります。
世界的に人気が高い藤原雄作品は、陶芸品の中でも買取価格は比較的高くなりやすいでしょう。
ただし、陶芸作品の買取価格は、作品の保存状態によって大きく影響を受けます。
作品にヒビや傷がある、一部欠損があるなどの場合には、買取価格が大きく下がってしまう恐れもあります。
藤原雄作品の買取を考えている場合には、十分注意して保管するようにしましょう。
藤原雄作品を買取してもらうにはどのような方法がある?

藤原雄作品を売却したいとき、身近な方法としてはどのようなものがあるでしょうか。
考えられる3つの買取方法について、概要とメリット・デメリットをご紹介します。
3つの方法とは以下の通りです。
・ネットオークションを利用する
・リサイクルショップを利用する
・骨董品専門の買取業者を利用する
ネットオークションを利用する
藤原雄作品を売却するための1つ目の方法として、ネットオークションへの出品があります。
スマートフォン1つあれば出品できてしまうので、非常に手軽な方法だと言えるでしょう。
しかしながらネットオークションには、インターネットを介した方法ゆえの弱点もあります。
ネットオークションでは売り手と買い手は互いに顔を合わせることはなく、非対面でのやり取りになります。
また実際の商品も、落札するまでは直接見ることはできません。
このような仕組みから、ネットオークションは取引に対する安心感が高くありません。
陶芸作品は真贋の見極めが難しい上に、特に藤原雄作品は高価ですから売れにくい傾向にあるようです。
また、配送業者を介して商品のやり取りをするため、配送中に割れてしまうなどのトラブルが起こる可能性がゼロとは言えません。
ネットオークションは、藤原雄作品を安心して売るには適した方法ではないかもしれません。
リサイクルショップを利用する
次に、リサイクルショップの買取サービスを利用して、藤原雄の陶芸作品を買取してもらう方法が考えられます。
実際、幅広い商品を取り扱うリサイクルショップの中には、食器や酒器といった陶磁器の買取を行っている店舗も多くあります。
リサイクルショップは駅前や幹線道路沿いに多く、アクセスしやすい店舗も多いです。
売りたい品物を店頭に持ち込めば、その場で査定・買取してもらえるという手軽さも魅力でしょう。
ただし、リサイクルショップはあくまでも食器や酒器といった実用品としての陶磁器を取り扱っているに過ぎません。
藤原雄作品のように、芸術性に高い価値があるような陶芸作品を適正に査定できるかどうかは疑問です。
幅が広い商品を扱うリサイクルショップにおいて、芸術的価値がある陶芸作品に精通した鑑定士が常駐していることは考えにくいでしょう。
リサイクルショップでは、藤原雄作品の適正な価値を見極めてもらえず、作品が本来持つ価値よりも安い価格で買取されてしまうという危険性があります。
骨董品専門の買取業者を利用する
取扱商品の幅が広いリサイクルショップとは異なり、骨董品に特化した、あるいは取扱商品が複数ある中でも骨董品に強みを持った買取業者も存在します。
骨董品を専門とする買取業者であれば、芸術としての陶芸作品に精通した鑑定士が在籍しているはずです。
買取価格に関しては、骨董品専門の買取業者が最も信頼できます。
ただし、骨董品専門の買取業者には、リサイクルショップなどと比較して店舗数が少ないという弱点があります。
思い当たる店舗が近くにないという方も多いのではないでしょうか。
そんな場合には、出張買取サービスの利用を検討してみてください。
出張買取とは、買取業者の査定スタッフが利用者の自宅まで来て査定・買取してくれるサービスのことで、骨董品専門の大手買取業者が行っていることが多いです。
近くに店舗がなくても、自宅にいながら専門買取業者のサービスを受けることができます。
藤原雄作品をより高く買取してもらうためのポイントとは

藤原雄作品は世界的に人気が高く、買取市場での需要も高いです。
買取価格も、陶芸作品の中では比較的高くなると言えるでしょう。
では、そんな藤原雄作品をより高く買取してもらうためには、どのようなポイントに注意すれば良いでしょうか。
藤原雄作品を買取に出す際に押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。
作品の保存状態を良く保っておく
藤原雄に限らず、陶芸作品の買取においては、保存状態の良し悪しによって買取価格が大きく変動してしまうことがあります。
藤原雄作品はいくら価値が高いとは言っても、ヒビや傷、一部欠損があるなど、保存状態が悪ければ買取価格は下がってしまうでしょう。
ヒビや欠損の原因となるような大きな衝撃を与えないように、藤原雄作品は普段から丁寧に扱うことが大切です。
使わないときには柔らかい布にくるんで箱に入れておくなど、作品に傷がつかないように保管しましょう。
共箱は作品と一緒に査定に出す
藤原雄をはじめとした陶芸作品の買取において、作品の保存状態と並んで重要なポイントになるのが、共箱(ともばこ)の有無です。
共箱とは作品を入れるための木箱のことで、作者の自筆による作品名や、作者のサインが入れられています。
共箱はコレクションとしても重要な付属品ですし、真贋の判定にも大きく役立ちます。
買取業者の目線から考えたとき、共箱がある場合と無い場合とでは、買取後の販売のしやすさが全く違います。
共箱がある方が高値で販売できる可能性が高いため、買取価格も高くつけることができるのです。
買取の際に一緒に査定に出せるように、作品と併せて共箱も大切に保管しておきましょう。
骨董品専門の買取業者に査定を依頼する
藤原雄作品で保存状態が良く、共箱も付いているならば、その陶芸作品が持つ価値は非常に高いと言えるでしょう。
元々が価値の高いものですから、高い価格で買取してもらうには、やはり作品本来の価値をしっかりと見極めてもらうことが重要です。
その意味で、藤原雄作品の買取においては、作品本来の価値を見極められる骨董品専門の買取業者に査定を依頼するのがおすすめです。
お持ちの藤原雄作品の正しい価値を把握した上で、自分に合う売却方法を選びましょう。
藤原雄の買取についてのまとめ

備前焼の人間国宝である藤原雄と、藤原雄の陶芸作品についてご紹介してきました。
人間国宝であり、世界的に人気の高い藤原雄が手掛ける陶芸作品は、非常に価値が高いです。
買取市場でも人気が高く、高い価格で取引されやすいでしょう。
陶芸作品は適正な価値を見極めるのが非常に難しい商材です。
藤原雄作品を買取に出す際は、骨董品専門の買取業者を利用することで、藤原雄作品本来の価値を見極めてもらえるでしょう。
査定の際は保存状態に留意の上、共箱も一緒に査定に出すことで、より高く買取してもらえる可能性は高いでしょう。