絵の種類の名称一覧|技法や流派による分類をわかりやすく解説
絵画の歴史は長く、その始まりは6万5000年以上前にネアンデルタール人が描いたとされる洞窟壁画まで遡ります。
あらゆる技法を経て進化し続ける絵画は時代を超えて受け継がれ、当時の歴史や文化を探る研究がされるほか、現在も世界中で名画の展覧会が開かれるなど人々を魅了してやみません。
しかし一言に絵画と言っても、描かれた年代や国によって技法はさまざまです。
展覧会を開催していても、絵画の知識がないし、「何を見て、どう楽しめば良いのかわからない…」という方もいるのではないでしょうか。
本記事では、そんな絵の種類や特徴についてご紹介します。
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絵画技法で分類したときの種類
まずは、絵画技法で分類した場合の絵の種類をご紹介します。
絵画は大きく分けて、下記の10種類の技法があります。
- 日本画
- 洋画
- 油絵
- 水彩画
- アクリル画
- ペン画
- 版画
- コラージュ
- シルクスクリーン
- デジタル絵画
それぞれの技法について、詳しく見ていきましょう。
日本画
日本画の伝統的な画法としてメジャーなのは、大和絵や浮世絵と言われるものです。
洋画と比較すると、あまり油分を含まない画材を使用することが一般的と言えます。
日本画は、墨や、貝殻を原料とした胡粉、天然または人工の鉱物を砕いて発色させる岩絵具など、日本特有の素材を使用して描かれています。
どの画材も、洋画に用いられる画材と比較するとテクスチャは緩めで、艶はなくマットな質感に仕上がります。
また、陰影や遠近を強調しない描写で、平面的な作品が多いことが特徴です。
洋画
洋画は、油彩や水彩で描かれています。
画材に油分を含むため、大和絵や浮世絵など日本画と比較すると艶があり、発色も鮮やかな印象です。
また、洋画ではよりリアルに近い、写実的な表現を追求する傾向にあります。
遠近法が駆使され、画材の濃淡で陰影をつけるなどの技法が用いられます。
油絵
油絵は14世紀後半に確立した画法と言われています。
キャンバスは布のイメージが強いですが、紙や木、金属や革を使用することもあります。
画材である油彩絵具の主成分は乾性油で、透明感と光沢が強いことが特徴です。
油彩絵具は粘度が高く、色を載せる時には、画筆のほかにペインティングナイフやパレットナイフを用いることもあります。
水彩画
水彩画の歴史は、旧石器時代の洞窟壁画にまで遡ると言われています。
本や文書を手書きで複製する写本の技術として、エジプト王朝時代から中世ヨーロッパでも使用されていました。
芸術表現としての画法が確立したのはルネサンス期です。
植物や動物、風景が描かれることが多く、バロック時代の油絵画家からはスケッチや模写などに用いられていました。
水彩絵具の主原料は顔料とアラビアガムで、紙に筆で描かれることが一般的です。
アクリル画
アクリル画は、アクリル樹脂を用いて描く画法です。
水彩画とも似ていますが、絵具の主成分が異なります。
水彩絵具の成分が顔料とアラビアガムであるのに対し、アクリル絵具の成分は顔料とアクリル樹脂です。
アクリル樹脂は耐水性があるため、重ね塗りや厚塗りをしたりすることができます。
水彩や油彩と比較すると速乾性に優れており、輝度も高いのが特徴です。
ペン画
ペン画は、その名のとおりペンを使用して描く技法です。
風景画や空想画が描かれることが多く、一般的には黒いインクを用いて紙に描かれます。
ペン画で使用されるペンにも種類があり、過去はGペンや丸ペンと呼ばれるペン先が割れたタイプのペンや、スクールペンが主流でした。
最近ではペン先の素材も進化し、プラスチック製で一定の太さの線が描けるミリペンや、金属で筒状のロットリング製図ペンなどが使用されています。
版画
版画は、木や紙に彫刻などの細工を施して作成した版にインクなどの色を乗せ、それを紙に押し付ける画法です。
版画の中でも仕組みが大きく分かれており、下記の4つに分類されます。
- 凸版画…木材、ゴム、リノリウムなどの素材に細工を施し、版の飛び出た凸部分に色を付けてプレスする
- 凹版画…銅やポリ塩化ビニルなどの版に細工を施し、色を付けて拭き取ることで凹部分に残った色をプレスする
- 平版画…石やアルミ板に、油分が多く含まれるクレヨンやチョークで描き、紙にプレスする
- 孔版画…色を付けたい部分に穴を作りプレスする(=ステンシル)
同じ版を用いても、色の乗せ方や重ね方、プレスの圧によりバリエーション豊かな作品を生みだすことができます。
コラージュ
コラージュは比較的新しい表現方法です。
20世紀初頭に生まれ、語源は「糊で貼る」という意味のフランス語「coller」に由来していると言われています。
雑誌や新聞などから、もともと存在する絵や写真を切り取って紙に張り付ける方法が一般的です。
紙以外にも、花や草など植物の素材を集めて作成する作品もあります。
シルクスクリーン
シルクスクリーンは、孔版画の技法の一種です。
版として過去は絹が使われていましたが、最近では耐久性に優れた合成繊維が使われます。
ステンシルと似ていますが、メッシュ状の版を使用することが大きな違いです。
描きたい部分の網目からインクを通過させて描くことで作品を制作します。
現在ではTシャツやトートバッグのプリント技術に応用されています。
デジタル絵画
デジタル絵画は最も新しい画法です。
タッチペンやマウスを用いてパソコンやタブレット内のソフトに描き、完成に至るまでの道具が全てデジタル製品で作成されます。
ムラのない均一な色塗りや修正をすることもでき、使用するツール次第では油絵や水彩画のような表現も可能です。
スマートフォンやタブレットが普及したことにより、特別な道具を新しく揃える必要がなくアプリなどで誰でも簡単に制作することができます。
絵画流派で分類したときの種類
次に、絵画流派で分類したときの種類をご紹介します。
代表的な流派は下記の5つです。
- 印象派
- 抽象派
- 写実主義
- ロマン主義
- 新古典主義
それでは詳しく見ていきましょう。
印象派
印象派は19世紀後半のフランスで流行した芸術運動です。
クロード・モネの「印象・日の出」に始まり、画家としては、エドゥアール・マネ、エドガー・ドガ、ピエール=オーギュスト・ルノワールなどが有名です。
風景や植物、人間をモデルとし、動きが感じられるポーズや構図で、多くの鮮やかな色彩を用いて描かれます。
存在するものを見たままに描き写すのではなく、そこから感じられる印象を表現する流派です。
抽象派
抽象派は1910年代頃に広まり始めた流派です。
ロシア出身の画家であるカンディンスキーやモンドリアンが創始者と言われています。
抽象派が用いるのは、存在するものや風景を正確に描くのではなく、丸・三角・四角・線など、マークや記号と分類されるものに近い模様で表現する画法です。
抽象画にはピカソが始めた手法であるキュビズムも含まれ、作者の意図や表現を理解することが難しい絵画でもあります。
写実主義
写実主義は、思想や空想を反映せずに、目に見えるそのままを表現しようとする主張の流派のことです。
英語でリアリズム、フランス語でレアリスムとも言われます。
美術史としては、19世紀半ばにフランスを中心に広まった美術運動のことを指します。
写実主義の有名な画家は、オノレ・ドーミエ、ジャン=フランソワ・ミレー、ギュスターヴ・クールベなどです。
よく知られる絵画としては、ミレーの「落穂拾い」が挙げられます。
ロマン主義
ロマン主義は、作品に画家の思いやストーリー、スキャンダルなど感情的な要素を表現した流派です。
18世紀末から19世紀前半のヨーロッパで広く描かれました。視覚的には、鮮やかな色彩で繊細に描かれていることが特徴的です。
神秘や理想など自由な表現と、見るものに訴えかける感情表現が大衆にも受けました。
ロマン主義の有名な画家は、ウジェーヌ・ドラクロワやテオドール・ジェリコー、ウィリアム・ターナーなどです。
新古典主義
新古典主義は、18世紀半ばから19世紀初めにローマを中心としてヨーロッパに広まった様式です。
フランス革命を経て、バロックやロココなど派手で誇張した表現への反動から、原点に帰って正確性や倫理観を表現することが重視されました。
歴史や神話など理性的で道徳的な題材をもとに、華美な装飾は施さず、重厚なデザインで描かれます。
創始者は、馬に乗ったナポレオンの肖像画を描いたジャック=ルイ=ダヴィッドです。
.絵画主題で分類したときの種類
次に、絵画主題で分類したときの種類をご紹介します。
主な絵画主題は下記の6つです。
- 風景画
- 静物画
- 博物画
- 歴史画
- 宗教画
- 風俗画
それでは詳しく見ていきましょう。
風景画
風景を主題とした絵画です。自然や都市、建築などを描きます。
一般的に有名な風景画家は、17世紀フランスの古典主義絵画であるクロード・ロランや、19世紀イギリスのロマン主義画家であるジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(ロマン主義)、19世紀ドイツのロマン主義画家であるカスパー・ダーヴィト・フリードリヒなどです。
日本では、浮世絵師の歌川広重や川合玉堂などが有名です。
静物画
静物画とは、西洋画のジャンルの一つです。
人間や動物など動くものではなく、花や壷、楽器、果実、書物など、静止した物体をモデルとします。
我々人間の生活に深く関わる物が描かれることが特徴的です。
紀元1世紀のポンペイ遺跡から静物画の壁画が出土している歴史があります。
静物画の有名な作品としては、ヴィンセント=ヴァン・ゴッホの「ひまわり」、フェーデ・ガリツィアの「静物」、ポール・セザンヌの「頭蓋骨のある静物」などが挙げられます。
博物画
博物画は、植物や動物、鉱物などを観察対象として記録用に描いた絵画です。
肖像画や解剖画なども博物画に含まれます。
美術性よりも科学性が重視され、現在の写真のような役割を果たしていました。
現在でも医学書や図鑑などに使用されます。
肖像画
肖像画は、特定の人物をモデルとした絵画で、顔や姿を描いた絵画です。
起源は古代エジプトに遡り、葬儀の際に描かれた肖像画が残っていました。
芸術として繁栄したのは古代ローマの彫刻です。
この頃は写実的に表現されていましたが、徐々に理想化や戯画化されるようになります。
肖像画の有名な作品として、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ=リザ」が挙げられます。
歴史画
歴史画は、歴史上で起こった事件を題材にした絵画です。
戦争や神話についても描かれ、事実や出来事を後世に伝える役割を果たします。
宗教的な題材が含まれることもあり、いずれにしても大きなメッセージ性を含んでいることが特徴的です。
歴史画の有名な作品として、ジャック=ルイ・ダヴィッドの「マラーの死」や、ウジェーヌ・ドラクロワの「民衆を導く自由の女神」などが挙げられます。
宗教画
宗教画は、主にキリスト教信仰における聖書の登場人物や事跡などを描いた絵画です。
文字の読み書きができない庶民にも宗教を広めるために、教会が画家に依頼して描かせたと言われています。
教会には必ずと言っても過言ではないほど、飾られています。
宗教画の有名な作品として、サンドロ・ボッティチェリの「カステッロの受胎告知」や、ラファエロ・サンティの「オークの木の下の聖家族」などが挙げられます。
風俗画
風俗画は、庶民の日常の現実生活を題材にした絵画です。
写実的な表現から理想化されたものまで描写はさまざまですが、当時の庶民の生活を知るための貴重な手がかりとなっています。
宴や農作業のシーンが描かれ、その親しみやすさから中産階級に人気がありました。
風俗画の有名な作品としては、ピーテル・ブリューゲルの「農民の踊り」、ディルク・ハルスの「楽しい仲間」などが挙げられます。
絵画の種類についてよくある質問
絵画の種類についての基礎知識が分かったところで、よくある質問に回答します。
印象派とロマン派の絵画の違いは?
印象派は、19世紀後半にフランスで広まった様式です。
動きが感じられる大胆な構図で、題材から感じる印象を多くの色で鮮やかに表現しています。
対してロマン派は、18世紀末から19世紀前半のヨーロッパで広く描かれた様式です。
神秘や理想を自由に表現し、画家の思いやストーリーを絵画に乗せ、見るものへ感情的に訴えかけます。
印象派は雰囲気重視で情景的、ロマン派はドラマチックでストーリー性があると表現されます。
絵画のジャンル分けは?
絵画のジャンルは何を基準とするかによって、定義がさまざまです。
下記で例をいくつかご紹介します。
- 地域…日本画、西洋画など
- 画材…油絵、水彩画など
- 画法…ペン画、版画など
- 題材…風景画、歴史画、肖像画など
- 流派…写実主義、新古典主義、ロマン主義など
日本で人気のある画家は誰?
日本で人気のある画家はたくさんいますが、中でも代表的な画家には以下のような人物がいます。
- 歌川広重
- 葛飾北斎
- 雪舟等楊
- 杉山寧
- 東山魁夷
- 横山大観
- 岡本太郎
- 草間弥生
- 松井冬子
- 村上隆
- 奈良美智 など
まとめ
今回は、絵の種類について解説してきました。
絵画は歴史が長く、表現にはさまざまな特徴が表れていることがわかったと思います。
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