大島紬のマルキとは?見分け方やマルキ数の種類を理解して価値を知ろう!

2024.10.15

着物買取 コラム

鹿児島県・奄美大島・宮崎県都城市で作られる大島紬は、世界3大織物のひとつにも数えられる有名な織物です。

その大島紬の価値にも関わるポイントとして、大島紬の柄を作り上げる際に用いる絣糸(かすりいと)の本数を表す「マルキ」というものがあります。

大島紬はマルキ数によって作り方の難易度や仕上がりのイメージが異なり、着物としての価値も変わってくることがあります。

本記事では、大島紬のマルキとは何か、マルキ数の種類と見分け方、大島紬の柄の表現方法である「一元式」と「片ス式」について解説します。

また、大島紬の証紙や有名な柄についてもご紹介しますので、お持ちの大島紬がどのような特徴・価値を持っているものなのか確認してみてください。

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大島紬はどんな着物?

大島紬はどんな着物?

大島紬は、フランスの「ゴブラン織」・イランの「ペルシャ絨毯」と並び、世界3大織物に名を連ねる織物です。

鹿児島県鹿児島市、鹿児島県奄美大島、宮崎県都城市などで生産される伝統工芸品で、30以上もの工程のうちほとんどが手作業で作られています。

大島紬を1枚仕上げるのに多くの職人や工房を経るため、半年以上、さらに長いと1年以上の製作期間を要します。

1300年前にはすでに奄美に文化として存在していたという大島紬は、1975年に国の伝統的工芸品に指定されました。

泥染めという変わった染色法、素材が正絹100%、そして主に自然の草花をモチーフとした文様になっているのが特徴です。

「大島紬」と呼ばれるための要件や産地、大島紬の価値や着物としての格などについては、以下のコラムにて詳しく解説していますので、参考にご覧ください。

大島紬のマルキとは?

大島紬のマルキとは?

マルキとは、大島紬の文様を表現するための絣の細かさを表す単位です。

大島紬一反は通常1240本の経糸で構成されています。

そこから両耳端(40本×2)を除いた経糸数1160本のうち、経絣糸がどれくらい使われているかを表します。

具体的なマルキ数は、一反の中で使われている経絣糸の総本数(1160本のうちの何本が経絣糸か)を用いて、以下のような数式で求められます。


マルキ数 = 一反当たりの経絣糸の総本数 ÷ 80


織物では80本の経糸をまとめて一単位で数えますが、それを1算(よみ)といいます。

従ってマルキとは、「一反のうちにどれくらいの算数(よみすう)の経絣糸が入っているか」という数字で表されます。

なお、このマルキ数の小数点以下は切り捨てられます。


例えば、地糸2本と絣糸2本が交互に繰り返されるパターンであった場合、経糸1160本のうち半分が経絣糸になりますから、総本数は580本です。

580本を80で割ると7.25ですから、この大島紬は「7マルキ」ということになります。

マルキの見分け方

マルキの見分け方

大島紬の主なマルキ数には、5マルキ・7マルキ・9マルキがあります。

特に多く世に出ているのが7マルキの大島紬です。

さて、お持ちの大島紬のマルキ数がいくつであるかの見分け方なのですが、実は大島紬には、文様を表現するための最小単位の構成の仕方によって「一元(ひともと)式」と「片ス(かたす)式」という2つの方式があります。

この方式の違いによって、マルキ数の見分け方にも違いがでてきます。

一元式と片ス式

一元式と片ス式とでは、文様を表現するための最小単位の構成が違っています。

それぞれ、文様を表現するための最小単位が以下のようになっています。


  1. 一元式…緯絣糸2本に経絣糸2本を交差させた風車マークのような絣になる
  2. 片ス式…緯絣糸2本に経絣糸1本とを交差させたT字の絣になる

一元式は、従来からある大島紬の伝統的な織り方です。

片ス式に比べて経絣糸が多い分、絣から伝わる力が強く、文様の印象が美しくはっきりとしています。

実際に、一元式と片ス式とで色のついた部分の面積を比較すると、片ス式は一元式の63%ほどにとどまっています。


一方の片ス式のメリットは、経絣糸が少ない分、楽に織ることができるという点です。

一元式の場合、織る際に絣糸の交点がきれいに合わないと、模様の歪みが目立ちやすく、粗い印象になってしまいます。

そのため、一元式で織るには非常に高度な技術が必要となります。

片ス式では基本単位がT字になっているため、絣合せが正確でなくてもある程度のごまかしがきくのです。

片ス式の方が量産しやすく、低コストで作ることができるため、現在では流通している大島紬の多くが片ス式となっています。


なお、特殊な織り方として、パターンを崩しながら織る「割り込み式」と呼ばれるものもあります。

一元式と片ス式を組み合わせたような絣の柄になる織り方で、織るのに非常に高い技術が必要な複雑な絣となっています。

割り込み絣の大島紬は織れる職人も少ないため非常に珍しく、希少価値が見込める品とされています。

一元式のマルキ数の見分け方

マルキ数は、経糸における絣糸と地糸のパターンを確認することで見分けることができます。

一元式では、文様を表す最小単位は経絣糸2本(と緯絣糸2本)で構成されていました。

一元式のマルキ数の見分け方は、経絣糸2本に対して地糸が1本入っていれば9マルキ、2本入っていれば7マルキ、3本入っていれば5マルキとなります。

 絣糸地糸経絣糸総本数算数マルキ数
5マルキ一元234645.85
7マルキ一元225807.27
9マルキ一元217729.69

片ス式のマルキ数の見分け方

片ス式の場合には、文様を表す最小単位は経絣糸1本(と緯絣糸2本)で構成されていました。

片ス式のマルキ数の見分け方は、経絣糸1本に対して地糸が2本入っていれば9マルキ、3本入っていれば7マルキ、4本入っていれば5マルキとなります。

 絣糸地糸経絣糸総本数算数マルキ数
5マルキ片ス142322.92
7マルキ片ス132903.63
9マルキ片ス123864.84

同じ「7マルキ」でも、一元式では絣糸2本に地糸2本(計4本)というパターンだったのに対して、片ス式では絣糸1本に地糸3本(計は同じく4本)というパターン」になっています。

「経糸4本で図と地が一周」すれば7マルキという呼ばれ方をしていることが分かります。

7マルキ片スは7マルキ一元に対して、マルキ数に換算すれば半分ほどの数字にしかなりません。

マルキ数は大島紬の価値にも関わってくるポイントですので、「7マルキ一元」と「7マルキ片ス」、同じ7でも絣糸の数は倍違うという点を押さえておきましょう。


なお、片ス式では特殊なパターンとして「12マルキ」と呼ばれるものがあります。

絣糸と地糸のパターンとしては、9マルキ片スと同じく経絣糸1本に対して地糸が2本なのですが、一反に使われている糸の数自体が多くなっているのです。

12マルキの大島紬は流通量が非常に少なく、希少価値が高いものとされています。

大島紬の証紙

大島紬の証紙

本場大島紬には産地ごとに、各組合から発行されている証紙が付きます。

証紙が付いていることで、その着物が厳しい審査をクリアした、価値のある着物であるということが証明されます。

それぞれの証紙には織り元の名前や証紙を発行した組合名・織り方などが記載されており、さらに織り方によっても台紙の色が変わるなど、その大島紬についての重要な情報が分かるようになっています。

また、染めの基準をクリアしたものには染め証紙も付きます。

ここでは、本場大島紬の3種類の証紙と、証紙によって何が見分けられるのかを解説します。

大島紬の証紙の種類

本場大島紬の証紙には、以下の3種類があります。

鹿児島産「本場大島紬」の証紙

鹿児島産「本場大島紬」の証紙は、本場大島紬協同組合が発行しています。


  1. 手織り…青い台紙に、旗印と伝統工芸品マークが貼られ、さらに緯絣の場合はそこに「織絣」という赤文字が捺印されています。
  2. 機械織り・緯絣…青い台紙に、旗印とブルーの旗印に赤文字「織絣」が捺印され、鹿児島県絹織物工業組合発行の伝統工芸品マークが付きます。
  3. 機械織り・縞大島…オレンジの台紙に、旗印と金色の正絹シールが貼られています。

また、泥染めの基準をクリアしたものには、これらの証紙に加えてさらに染め証紙が付きます。

奄美大島産「本場奄美大島紬」の証紙

奄美大島産「本場奄美大島紬」の証紙は、本場奄美大島紬協同組合が発行しています。


  1. 手織り…白い台紙に、地球印と伝統工芸品マークが貼られています。地球印には地球の中央に「大島紬」の文字が書かれています。
  2. 機械織り…白い台紙に、手織りと異なる地球印の証紙が貼られています。

また、天然の泥で染めたものには青い「泥染証紙」が、テーチ木以外の草木で染めたものには薄茶色の「草木泥染証紙」が付きます。

宮崎県都城市「本場大島紬」の証紙

宮崎県都城市「本場大島紬」は、都城絹織物事業協同組合が発行しています。

白い台紙に、青地の鶴印が貼られています。

本組合は経産省から検査認可を受けていないため、伝統マークがありません。

証紙によって見分けられること

これらの証紙を見ることで、その証紙が付されている大島紬について以下のようなことを見分けることができます。


  1. 詳しい産地(鹿児島・奄美大島・都城)
  2. 手織りか機械織りか
  3. 染め方(泥染め・草木染めなど)

お持ちの大島紬がどのような種類のものであるか、一度証紙を確認してみてください。

大島紬の有名な柄

大島紬の文様には、主に自然の草花や伝統的な柄などが多く採用されています。

なかでも有名な柄を紹介します。


  1. ・龍郷(そてつ)柄…奄美に生息するソテツの葉や実をモチーフとした文様
  2. ・秋名バラ柄…バラは琉球語でザルを意味する。竹編みのサンバラというザルをモチーフにした文様
  3. ・西郷柄…西郷隆盛の名前からとった名称で、細かく複雑な文様が入った男物の小絣文様

ほかにも、古典模様、幾何学模様、有馬柄、伝優柄、白雲柄など、さまざまな大島紬が制作されています。

基本的に1枚の大島紬に入っている柄の数が多いほうが価値が高いとされやすいです。