荒川豊蔵の陶磁器の買取相場は?高価買取のポイントも解説

荒川豊蔵(あらかわとよぞう)は、昭和の日本を代表する陶芸家の1人です。
志野と瀬戸黒の制作で人間国宝に認定されている有名作家であり、多くの骨董ファンから愛されています。
骨董品買取市場でも荒川豊蔵の陶磁器は非常に人気が高く、高価買取されるケースも少なくありません。
本記事では、荒川豊蔵作品の特徴や代表的な技法、買取市場で高く売れる理由、高く売れやすい荒川豊蔵作品の特徴、荒川豊蔵の陶磁器を高価買取してもらうためのポイントなどについてご紹介します。
※本記事の内容は、必ずしも買取価格を保証するものではございません。予めご了承下さい。
荒川豊蔵とは
荒川豊蔵(1894-1985)は、昭和を代表する美濃焼の陶芸家です。
志野と瀬戸黒の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されており、桃山時代の伝統技法の復興に尽力したことで知られています。
荒川豊蔵が生まれたのは、美濃焼の伝統が受け継がれている岐阜県多治見市です。
隣町・土岐市で陶祖と呼ばれた陶芸家・加藤与左衛門景一の血を引く荒川豊蔵は、中学校を卒業すると、陶磁器の貿易を手がける会社に就職します。
その仕事の中で、陶芸家の宮永東山(みやながとうざん 1868-1941)や北大路魯山人(きたおおじろさんじん 1883-1959)と出会ったことをきっかけに、荒川豊蔵は陶芸家としての道を歩むことになります。
荒川豊蔵の功績として外せないのが、志野・瀬戸黒・黄瀬戸といった、桃山時代の美濃でつくられていた「桃山陶」の復興です。
それまでの通説では、桃山時代の志野焼・瀬戸黒などは愛知県の瀬戸で焼かれていたと考えられていました。
しかし、荒川豊蔵が岐阜県高山市大萱(おおがや)の古窯跡で志野焼の陶片を発見したことから、桃山陶が美濃で作られていたことが分かり、日本の陶磁史を大きく塗り替えることになりました。
その後、荒川豊蔵は大萱に桃山時代様式の単室窖窯を築き、志野・瀬戸黒・黄瀬戸といった美濃桃山陶の再現に生涯を捧げました。
その功績と作陶技術が認められ、1955年には重要無形文化財「志野」と「瀬戸黒」の保持者として人間国宝に認定されています。
その後も生涯を通じてひたむきに陶芸と向き合い続け、紫綬褒章受章、文化勲章受章など数々の功績を残しました。
そんな荒川豊蔵の作品は、多治見市の荒川豊蔵資料館や石川県の国立工芸館などで見ることができます。
荒川豊蔵が得意とした志野・瀬戸黒とは
荒川豊蔵が得意としたのは、人間国宝にも認定されている志野・瀬戸黒の茶碗です。
ここでは、志野と瀬戸黒の特徴について見ていきましょう。
志野の特徴
志野の特徴として上げられるのが、「長石釉(ちょうせきゆう)」と呼ばれる釉薬を厚くかける点です。
この釉薬は焼き上がると、不透明な乳白色になり、柔らかな肌合いを生み出します。
そしてまた、焼成中に長石釉が収縮することで表面に小さな穴や気泡の跡ができ、これが「ゆず肌」と呼ばれる独特の質感になります。
さらに、焼成するなかで、釉薬が薄くなっていた部分や窯の中で炎が直接当たった部分には、土に含まれる鉄分が赤く発色することがあります。
この「緋色(ひいろ)」が、白い釉薬との対比で美しい文様を生み出します。
荒川豊蔵が復刻・発展させた志野のことを特に「荒川志野」と呼ぶこともあります。
また、志野は施釉や装飾の技法によって、いくつかの種類に分けられます。
- 無地志野(むじしの):模様を描かない、釉薬だけで装飾する志野
- 絵志野(えじの):鉄分を含む土で草花や文様を描いた志野
- 鼠志野(ねずみしの):鉄分を含む土を全体に塗り、その一部を掻き落とすことで文様を描く志野
- 紅志野(べにしの):文様の描き方は鼠志野と同様だが、赤く発色するように工夫された志野
- 練込志野(ねりこみしの): 白い土と赤い土を練り混ぜて成形することで、マーブル状の文様が現れる志野
瀬戸黒の特徴
瀬戸黒の特徴はなんといっても、特殊な焼成技法によって生まれる漆黒の釉薬です。
瀬戸黒の制作では、鉄分を多く含む釉薬を施した陶器を、約1200℃の高温で焼成します。
そして、釉薬が溶けきったところで窯から引き出し、水につけるなどして急激に冷やします。
この急激な温度変化によって釉薬に含まれる鉄分が化学変化を起こし、瀬戸黒の艶やかな漆黒が発色するのです。
この技法は「引き出し黒(ひきだしぐろ)」と呼ばれています。
さらに、この急冷によって釉薬の表面には細かい貫入(ひび)や縮れ(釉薬が焼成中に縮んでシワが寄ったようになる)が入り、それが瀬戸黒特有の味になっています。
瀬戸黒の黒い茶碗は「侘び」の精神を表現するとして、茶の湯の世界で非常に好まれています。
荒川豊蔵の作品の種類
荒川豊蔵が得意としたのは志野や瀬戸黒の茶碗ですが、ほかにも徳利やぐい吞といった酒器も多く残しています。
また、荒川豊蔵が開いた「水月窯」という窯があるのですが、ここでは高価な陶芸品だけでなく、普段使いの食器や茶道具なども制作しています。
荒川豊蔵作品の買取相場はどれくらい?
骨董品買取市場における荒川豊蔵作品の買取相場はどれくらいになるでしょうか。
荒川豊蔵は人間国宝にも認定されている人気作家のため、買取市場でも作品の価値は非常に高いと言えます。
ただし、同じ荒川豊蔵の陶芸作品であっても、買取価格は作品の種類、使われている技法、制作年代、保存状態などによっても幅があります。
その中でも特に高く買取されやすいのは、やはり人間国宝に認定されている技法である志野・瀬戸黒の茶碗です。
最も人気の高い作品で、状態も制作当時のまま保たれているなど高く買取されやすい条件が揃ったものであれば、最も高いもので500万円前後の買取相場になるものもあります。
※上記は2025年8月時点の参考価格であり、あくまで目安です。作家のなかでもっとも人気のある作品の相場を記載しております。
※査定させていただく骨董品の保存状態次第では、買取相場は上記に比べて大きく変動します。骨董品の状態によってはお値段がつかない場合もございますのでご了承ください。
お持ちの荒川豊蔵作品の具体的な価値については、バイセルの無料査定でお確かめください。
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バイセルには、荒川豊蔵をはじめとした茶碗の買取実績が数多くございます。
以下の各ページでは、有名作家の茶碗・茶道具の買取相場や、バイセルでの実際の買取例について記載してございます。
参考までにぜひご覧ください。
荒川豊蔵の志野茶碗と瀬戸黒茶碗
荒川豊蔵の代名詞と言えるのが、人間国宝に認定されている技法でもある志野・瀬戸黒の茶碗です。
実際に、骨董品買取市場でも荒川豊蔵の志野茶碗・瀬戸黒茶碗は買取価格が高くなりやすい傾向があります。
ここでは、陶芸家・荒川豊蔵の代表的な作品として、志野茶碗と瀬戸黒茶碗についてご紹介していきます。
荒川豊蔵の志野茶碗
桃山時代の志野の復興に尽力した荒川豊蔵ですが、彼の志野茶碗は単なる桃山時代の再現にとどまりません。
伝統的な志野に荒川豊蔵自身の美意識を加え、長年の探求の末に独自の作風「荒川志野」を確立しました。
荒川志野の特徴の1つ目は、長石釉を厚くかけることで生まれる温かみのある乳白色です。
釉薬が薄い部分は土の色が透けて見えることで、濃淡のコントラストが生まれます。
また、素地に含まれる鉄分が焼成中に赤く発色することで滲み出る「緋色」も、荒川志野の大きな魅力の一つになっています。
また、志野の特徴である「ゆず肌」も、荒川豊蔵は巧みに表現しています。
造形の点では、桃山時代の志野の造形を基本としつつも荒川豊蔵独自の解釈を加えた、ぼってりとした素朴な形が特徴です。
また、ろくろで成形された際に生じる指の跡やゆがみなど、作為によらない素朴な造形美があります。
こうして作られる荒川豊蔵の志野茶碗は、素朴でありながらも品格のある落ち着いた雰囲気を持ちます。
荒川豊蔵の瀬戸黒茶碗
漆黒の美しさと独特の風合いによって高い評価を得る荒川豊蔵の瀬戸黒茶碗は、荒川志野と並ぶ彼の代名詞です。
荒川豊蔵の瀬戸黒も単なる伝統技法の再現ではなく、荒川豊蔵独自の美意識が加えられた漆黒の美しさと独特の風合いは高い評価を得ています。
特徴的なのはやはり、高温で焼成中に窯から出して急冷する「引き出し黒」の技法による艶やかな漆黒です。
また、「引き出し黒」の技法によって発生する釉薬の貫入や縮れも、荒川豊蔵の瀬戸黒の大きな魅力となっています。
この縮れは桃山時代の瀬戸黒では焼成の失敗とみなされていたようなのですが、荒川豊蔵はこれを芸術的な表現として昇華させている点は特筆すべきでしょう。
造形の面では、荒川豊蔵の瀬戸黒茶碗は端正な円筒形、あるいは半筒形(深さが浅い円筒形)が基本となっています。
茶の湯の精神である「侘び」を表現するのに適した、シンプルで力強い形と言えるでしょう。
そして、瀬戸黒茶碗では口縁部がわずかに波打つような、不均一な起伏を持つものが多く見られます。
これは「山道」と呼ばれる瀬戸黒茶碗特有の形状で、荒川豊蔵の作品でもこの特徴が巧みに表現されています。
また、荒川豊蔵の瀬戸黒茶碗では、底部には釉薬がかかっておらず高台の部分の素地が露になっているものも多いです。
土が見えていることによる素朴な質感が漆黒の釉薬とのコントラストを生み出し、作品に奥行きを与えています。
ここに挙げた志野茶碗・瀬戸黒茶碗でなくとも、荒川豊蔵の作品であれば保存状態などの条件によって高く買取される可能性があります。
お持ちの荒川豊蔵作品の具体的な価値については、ぜひ1度バイセルの無料査定でお確かめください。
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お申し込みフォームへ荒川豊蔵の陶磁器を高価買取してもらうためのポイント
人間国宝、文化勲章受章者である荒川豊蔵の作品は、買取市場でも非常に高く評価されています。
では、荒川豊蔵の手掛けた茶碗などの陶磁器を少しでも高く売るためには、どのようなポイントに気をつければ良いでしょうか。
荒川豊蔵作品を含む陶磁器の買取において、より高く買取してもらうために知っておきたい3つのポイントをご紹介します。
- 綺麗な状態で保存しておく
- 共箱や鑑定書などの付属品を揃えておく
- 入手経路などの来歴を明確にしておく
綺麗な状態で保存しておく
荒川豊蔵を含む陶磁器の買取では、保存状態が良好である(制作当時の状態をなるべく保っている)ほど高く買取されやすい傾向があります。
反対に、ヒビや欠損などの傷がある、変色や退色してしまっている、カビが発生してしまっているなど保存状態が悪いと、その分だけ買取価格は下がってしまいます。
荒川豊蔵のような有名作家の場合には多少の経年劣化があっても買取してもらえる場合も多いですが、買取価格は下がってしまう可能性が高いでしょう。
作品を良い状態に保つためには、使わないときには柔らかい布にくるんで箱に入れておくなど、作品に傷がつかないようにしましょう。
また、変色や退色を防ぐには直射日光を避ける、カビを防ぐには湿気の多い場所を避けるなど工夫してあげるのがおすすめです。
共箱や鑑定書などの付属品を揃えておく
荒川豊蔵作品を含む陶磁器の買取において、重要な査定ポイントの1つになるのが共箱(ともばこ)・鑑定書・保証書といった付属品の有無です。
共箱とは作品を入れるための木箱のことで、作者の自筆によって作品名やサインが入れられているのが一般的です。
荒川豊蔵の茶碗の場合、共箱に書かれる「茶碗」の字が「茶垸」と表記されていることが多いのが特徴です。
また、特に晩年の作品では、「豊蔵」のサインの横に、雅号である「斗出庵」の「斗」の字が記されているものも見られます。
なお、この「斗」の字は、陶印として作品本体に入っている場合もあります。
これらの情報は「本物の荒川豊蔵作品である」という証明になるため、買取市場での信頼性が高まるでしょう。
その結果買取市場での需要が増し、より高く買取してもらえる可能性があります。
鑑定書も同様で、付いていることで作品の価値を証明できるため買取市場における信頼性が増します。
これらがあることで、より高い価格での買取につながる可能性があります。
共箱や鑑定書などの付属品がある場合には、作品本体と併せて大切に保管しておきましょう。
入手経路などの来歴を明確にしておく
荒川豊蔵をはじめとした骨董品の査定では、買取市場における作品の信頼性のために「どこで手に入れたか」「いつ購入したか」「誰から譲り受けたか」など購入に至るまでの背景が確認されます。
「業界で信頼されている専門店で購入した」「〇年△月に××博物館に貸し出した」などの来歴は、作品の価値を判断するうえでも重要な情報になります。
そして、その来歴を証明する書類等があればさらに信憑性が増し、買取市場における信用度が増すことでより高く売れるかもしれません。
入手した経路や時期、博物館への貸出履歴といった記録がある場合には、処分せずに大切に保管しておきましょう。
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