
円山応挙(まるやまおうきょ)といえば「幽霊のイメージ図」を作った画家として知られています。
現在も円山応挙が題材となった様々な展示会が開かれ、作品はコレクターが集めていたり複数の美術館に所蔵されるほど、後世に影響を与えた画家です。
自宅や倉庫に眠っている円山応挙の作品を買取に出そうか検討している方もいるでしょう。
条件によって作品は、高値の査定金額を出してもらえる可能性があります。
今回の記事は、円山応挙の概要と有名な作品、買取相場、買取してもらう際の注意点をご紹介します。
円山応挙について

円山応挙は、1733年に現在の京都府亀岡市に生まれた画家です。
農家で育った円山は15歳の頃に京都へ出て、鶴沢派の画家・石田幽汀(ゆうてい)に師事します。
円山は中国の眼鏡絵(絵をレンズを通して見る器具)の模写に励み、それを応用して京都の名所を描いていました。
1767年に35歳になった円山は、円満院の僧・祐常(ゆうじょう)の知遇を得て、本格的に画業に進みます。
祐常が亡くなる1773年までの約8年間、円山は円満院にたびたび出入りして知見を得ながら、新しい絵画芸術を目指して試行錯誤しました。
また、円山が写生の重要性を認識するきっかけに、当時の画壇を席巻していた沈銓様式(清代中期の画家の作風)、写生図を模写するほど傾倒した渡辺始興(しこう)などが推定されています。
これらの影響から円山はモノに対する写生を熱心に行っており、亡くなるまでに多くの写生帖を遺しました。
しかし、晩年近くの1793年頃から円山の視力は衰えていました。
死に近づいていながらも「保津川図屏風」を製作し、作家としての集大成を迎えて、1795年に亡くなります。
円山は写実技術の高さから画壇に大きな影響を与え、後世に遺された作品は愛好家たちに大切にされています。
円山応挙の有名な作品

円山応挙は諸説ありますが、「足のない幽霊」を初めて描いた画家とも言われています。
そして犬、鶴、鶏といった動物を描いた作品も多く、円山の朗らかな人間性がにじみ出ている印象を受けます。
また、「写生」による新しい画風を見出した円山の作品は、今日までに多くの人の目に触れてきました。
2019年に東京藝術大学の大学美術館が主催した「円山応挙から近代京都画壇へ」に出展され、他にも国内の著名な美術館や美術大学に所蔵されており、作品はこの先も多くの人々に注目され続けるでしょう。
ここでは、画壇に影響を与えた円山応挙の有名な作品をご紹介します。
幽霊図
「幽霊図」は「幽霊のイメージを世に広めたのは円山応挙」と言われるほど、一番有名な作品です。
1772年~1781年に製作された幽霊図は、黒く長い髪を垂らし、白い装束を着ている女性の足元がスッと消えているのが特徴です。
仔犬図
「仔犬図」は、円山が生後間もない茶系色で鼻筋の白い子犬たちを好んでおり、この作品以外にも多数描かれています。
つぶらな瞳やお尻を向けた茶目っ気あふれる5匹の子犬が、雪の上で戯れる様子は、円山の温かい人間性を象徴しているように見えます。
日月松鶴図屏風
「日月松鶴図屏風」は、背景を全て金地で鶴、松、日月を描いた屏風です。
屏風の右隻には金の板の太陽が貼られ、松、タンポポ、スミレ、ツツジの咲く春が描かれ、左隻には銀の板の三日月が貼られ、アシ、ヤブコウジ、穂を出す秋が描かれています。
「日月松鶴図屏風」は右から左に季節が移り、時の経過を表した作品です。
牡丹孔雀図屏風
「牡丹孔雀図屏風」は1781年に作られた作品です。
この作品は美しい羽をたらした雄孔雀と、そばにいる雌孔雀、その間から花をつけて枝を伸ばした牡丹が描かれています。
古くから牡丹と邪気払いの象徴とされた孔雀は、人々に需要があった題材です。
竹鶏図
「竹鶏図」は、1795年に円山が晩年に目を患い、ほとんど視力を失っていた中で描いていた「絶筆の作品」と言われています。
作品には金のふすまに2羽の鶏と竹林が描かれています。
晩年の円山は、製作を息子の応瑞(おうずい)や弟子たちに助けてもらわざる得ないほど、体が弱っていました。
しかし、竹鶏図には下絵の後に本画に移り、彩色や金箔が施されているので非常に手間がかかっています。
弟子たちの助けがあるとはいえ、寿命が近い円山がどのようにして作品を作ったのかは謎に包まれたままです。
円山応挙作品の買取方法

円山応挙の作品ですから、高値で買い取ってもらいたいですよね。
この項目では、以下の3つの買取方法をご紹介します。
・ネットオークションを利用する
・質屋を利用する
・古美術品に詳しい買取業者に査定を依頼する
ネットオークションを利用する
ネットオークションでは円山応挙の作品を売却できます。
サイズの大きな作品でも、自宅がインターネットにつなげられる環境であれば、手軽に出品できます。
しかし、ネットオークションで円山応挙作品を出品するのは、考え直した方が良いかもしれません。
円山応挙の作品は偽物も多く、ネットオークションにも本物と偽物が混ざって出品されています。
その中には、出品者でさえ本物かどうかが確認できていない作品も多くあるでしょう。
ネットオークションサイト閲覧者は、出品されている作品の説明と写真を頼りに品物を落札しようかを検討します。
玉石混交な上に信頼できるか品物かどうかの情報が少ないため、落札者は偽物を落札する不安が拭えないでしょう。
また、仮に落札後に品物が贋作だと発覚したとしても、出品者とトラブルに発展したら個人間で解決しなくてはなりません。
美術品をオークションで売るのはリスクが高いので、他の方法を選ぶことをおすすめします。
質屋を利用する
円山応挙の作品を質屋に持っていけば、すぐに現金化できます。
質屋は、期限までに元金と利息を返済すれば作品が返ってくるので、急な出費が出てしまった方には便利です。
また、質屋の中には買取も行っている店舗もあります。
しかし、買取も行う質屋は、骨董品以外にもブランド品のバッグや高級ジュエリー、時計、金貨などを幅広く買い取っている店舗も存在します。
買取も行う質屋は、品目ごとに専門知識のある査定員が不在していて、古美術品を適正金額で買い取ってもらえない可能性があります。
円山応挙作品を高値で買取してもらいたい人は、質屋以外の方法も検討してみましょう。
古美術品に詳しい買取業者に査定を依頼する
円山応挙作品は、骨董品や美術品に詳しい買取業者に査定をしてもらうことをおすすめします。
円山応挙作品などの古美術品は、査定員によるヒアリングを通して作品を価値をくまなくチェックした上で、査定金額を出します。
古美術専門の買取業者は、査定時に以下のようなヒアリングを行います。
・円山応挙作品をどのようにして手に入れたか
・作品を買った時期、もらった時期
・買った場所と金額
また、査定員はヒアリングに加えて、以下の着眼点で作品の価値を見極めます。
・作品の保存状態
・中古市場で需要があるか
・希少性の高い作家の作品か
・付属品は揃っているか
古美術専門の買取業者は、色々な角度から円山応挙作品を査定するので、信憑性の高い買取金額を出せます。
円山応挙作品の買取相場

円山応挙作品の中には保存状態がとても良好かつ作品の人気次第で、300万円もの買取金額がつく可能性があります。
古美術品は保存状態、完成時期、有名な作品かどうかによって、買取金額に大きく幅が出ます。
次の項目にある「円山応挙作品の買取してもらう際の注意点」を読んで、買取前に必要な知識を入れておきましょう。
円山応挙作品の買取してもらう際の注意点

円山応挙作品は古い時代に作られているからこそ、買取前に注意すべきことがあります。
後悔なく作品を買い取ってもらうには多少の手間ではありますが、項目の内容を参考にしてみてください。
作品の偽物に注意する
円山応挙の作品は偽物が大量に出回っている可能性が高く、特に掛け軸は専門家が驚くほど大量に出回っています。
例えば、偽物の作品には、円山応挙が描く線が他の作品と違って細い線だけだったり、人物の顔の輪郭に独特の丸みがないなどの特徴があります。
また、円山応挙の作品に付いてくる紙に書かれた鑑定書の代わりになる「箱書き」も、本人ではない誰かが作っている場合があります。
古い時代に作られた美術品は偽物が横行しているため、本物かどうかを知りたい方はしっかりと専門の買取業者に査定をしてもらいましょう。
作品の保存状態を確認する
円山応挙の作品をもらっても部屋に飾らないから、押し入れにしまっている人もいるでしょう。
しかし、査定前に作品の状態を見ようと押し入れから出したら、汚れが酷い状態になっている場合もあります。
円山応挙の作品に多い掛け軸や屏風は、保存状態が悪くなったときに出てくる汚れの特徴があります。
掛け軸
掛け軸はシミ、カビ、角の折れ曲がり、破れ、日焼け、色落ちなどがしやすいです。
掛け軸は、紙と絹を糊で貼り付けているだけなので、湿気によって斑点のようなシミが広範囲に渡ってできやすいです。
特に、湿気がたまりがちな和室の地袋(じぶくろ)に掛軸をしまうと、シミが発生しやすくなります。
掛け軸に付いたシミは濃さと薄さによって落とすのに時間がかかります。
強い薬剤を使って無理やり落とすと、作品が破れたり汚れが広がってしまうので避けてください。
屏風
屏風はシミ、虫食い、色落ち、日焼け、倒した衝撃による傷によって保存状態が悪くなってしまいます。
屏風を何度も折りたたむと蝶番(折れ曲がり部分)に負担が掛かって、屏風の剥がれや破れが起きる恐れがあります。
蝶番が一ヵ所でも切れると、他の蝶番にかかる重さのバランスが崩れてきます。
そして、重さの負担が大きくなった蝶番から傷みだし、時間が経つと破損してしまいます。
作品を額縁から外さずに査定に出す
査定員は、作品と額縁の値段を含めて買取金額を算出します。
円山応挙の作品を額縁ごともらった人や、ご自身で額縁に入れて飾っている人もいます。
査定をしてもらう際には、作品を額縁から外さずに査定をしてもらいましょう。
保存状態を確認したら早めに査定に出す
円山応挙は希少価値の高い作家なので、買取金額は高値になることが期待できます。
しかし、作品がシミ、カビ、日焼けで汚れていたら、査定金額が下がってしまう恐れがあります。
自己流で作品のお手入れをすると、取り返しのつかない事態になってしまいます。
経年劣化すると汚れが今以上に広がってしまうので、放置せずに早めの査定がおすすめです。
作者の落款、印章があるか確認する
円山応挙の作品には、作家の印である落款が付いています。
円山応挙の落款は作品によって應挙(おうきょ)、仲選(ちゅうせん)などの種類があります。
例えば、幽霊図には「戯図」の落款と、「應舉之印」と「仲選」の印章があります。
円山応挙の落款は種類がいくつかあるので「この落款は本人のなのか?」と疑問があれば、査定員に聞いてみてください。
複数の骨董品の買取業者に査定をしてもらってから決める
骨董品買取業者は作品に対する専門知識はあっても、業者によって買取金額や買取実績、査定員の質が違います。
査定金額だけではなくサービス全体の質を見るには、複数の骨董品の買取業者から見積もりを取ってもらって比較しましょう。
中古市場でも価値の高い円山応挙作品は、長期間自宅に保管をしていると劣化してしまいます。
売却を検討しているのであれば早めに査定に出すことをおすすめします。
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