ジャイロトゥールビヨンとは?SIHH2019でも話題のメカニズム
ロレックスやパテックフィリップなど有名な高級時計ブランドは数々ありますが、その中でもムーブメントの精度の高さで世界中の時計ファンから高い評価を得ているのが、ジャガー・ルクルトです。
そして、そのジャガー・ルクルトの最高傑作との呼び声高い機構こそが、時計の歴史においても画期的な発明「ジャイロトゥールビヨン」です。
ジャイロトゥールビヨンとはどのようなもので、ジャイロトゥールビヨンを搭載したモデルにはどのようなものがあるでしょうか。
ジャイロトゥールビヨンの概要や特徴、ジャイロトゥールビヨンモデルの価値などをご紹介します。
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目次
ジャイロトゥールビヨンを発明したジャガー・ルクルトとは
ジャガー・ルクルト(JAEGER-LECOULTRE)は、スイスの時計産業の中心地であるジュウ渓谷に拠点を置く、19世紀前半創業の老舗時計メーカーです。
ムーブメントの製造技術は世界的に評価が高く、パテックフィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタン、オーデマピゲ、IWC、カルティエなどの超有名ブランドの高級時計用にムーブメントを供給しているほどです。
そんなジャガー・ルクルトの時計は、徹底してマニュファクチュール(自社工場での一貫製造)にこだわっています。
1つの時計を開発・製造するにあたって、すべての工程を自社で行うために180種もの職人が集まっています。
デザインから組み立て、装飾に至るまですべての工程が自社の工場、自社の職人の手によって行われているのです。
「科学によって立つ」という企業理念のもと、技術の研鑽によってただひたすら優れたムーブメントの技術開発に邁進してきたジャガー・ルクルトは、「時計界きっての技術屋」という異名にふさわしいメーカーだと言えるでしょう。
超有名メーカーひしめく時計業界の中では知名度は特に高いとは言えず、誰もが知るブランドとは言えないかもしれません。
しかしながら、だからこそ、ジャガー・ルクルトは時計ファンたちのマニア心をくすぐり、深く愛されるブランドになっています。
トゥールビヨンとは
ジャガー・ルクルトはジャイロトゥールビヨンをはじめとして多種多様なトゥールビヨンを手掛けています。
ここではまず、そもそもトゥールビヨンとはどのようなものであるかについて確認しておきましょう。
計時の精度が求められる時計ですが、実は時計の精度は地球の重力に影響を受けており(内部機構自体の重みが、内部機構の動きに影響する)、それを考慮に入れた構造にしなければなりません。
しかし、実際には着けた腕の姿勢によって様々な方向に重力加速度がかかるため、その影響をすべてキャンセルするのは難しいものがありました。
そこで18世紀に開発されたのが、時計の心臓部とも言える脱進機(ゼンマイのほどけていくエネルギーを歯車へ伝える際に、そのスピードを調整する部品:エスケープメントとも呼ばれる)をキャリッジ(回転式のケージ)に取り付け、重力の影響を無効化する「トゥールビヨンメカニズム」です。
通常、毎分1回転するスピードで継続的に複雑機構を回転させることで、トゥールビヨンは位置の誤差を排除して精度を保ちます。
そして、このトゥールビヨンのさらなる進化形として、ジャガー・ルクルトの「ジャイロトゥールビヨン」があります。
ジャガー・ルクルトのジャイロトゥールビヨンとは
ジャガー・ルクルトのジャイロトゥールビヨンは、通常のトゥールビヨンと比べてどのような点が異なるのでしょうか。
大きく異なるのが、脱進機を収めるキャリッジが球体になっている点です。
従来のトゥールビヨンが持つ平面的な回転ではなく、複雑機構が三次元的な多軸回転をすることで、どのような姿勢であっても重力の影響をキャンセルできるようになっています。
その結果、さらに飛躍的な精度上昇を可能にしたのが、ジャガー・ルクルトのジャイロトゥールビヨンです。
しかしながら、キャリッジを球体にしたことによって、新たな問題も生じました。
腕にフィットする小型かつ薄型の形状が重要な腕時計において、球体のキャリッジを収めなければならないというのは非常な難問でした。
そこでジャガー・ルクルトは世界最高峰の技術を総動員し、内部機構の極限までの小型化に成功したのです。
精度の高い時計作りをし続けてきたからこその発想力と、ムーブメント製造にこだわり続けたからこその技術力、この2つを併せ持ったジャガー・ルクルトだからこその勝利だったと言えるでしょう。
このジャイロトゥールビヨンを搭載した時計はどれも超高級時計ばかりで、何千万円というような販売価格になっているものが多いです。
ジャガー・ルクルトのSIHH2019出品作
2019年に開催された国際的な高級時計の見本市であるSIHH(Salon International Haute Horlogerie:通称ジュネーブサロン)において、ジャガー・ルクルトは「歴史上最も複雑な時計」とも言われる衝撃のジャイロトゥールビヨンモデルを発表しました。
なんと世界限定18本、参考価格jで約1億円というとんでもない高級時計です。
そのモデルの名前は「マスター・グランド・トラディション・ジャイロトゥールビヨン・ウエストミンスター・パーペチュアル」です。
名前からして、いかに複雑な機構を搭載しているかが伝わってきますよね。
このうち、後半の「ジャイロトゥールビヨン・ウエストミンスター・パーペチュアル」が、搭載された複雑機構を表す部分となっています。
「ジャイロトゥールビヨン」は、先ほどご紹介したジャイロトゥールビヨンが搭載されているという意味です。
残りの「ウエストミンスター」と「パーペチュアル」の部分についても見ていきましょう。
ウエストミンスター
「ウエストミンスター」は、ロンドンのウエストミンスター宮殿の時計台「ビッグベン」が15分ごとに奏でる4つのメロディー(ウエストミンスターチャイム)を転用した、音で時間を知らせるミニッツリピーター機能のことです。
その4つのメロディは4つの音階からなり、1時間のうちの15分ごとに、演奏されるフレーズが変わります。
マスター・グランド・トラディション・ジャイロトゥールビヨン・ウェストミンスター・パーペチュアルでは、ミニッツリピーターを起動すると、4組のゴングとハンマーがウェストミンスターチャイムを奏でて15分単位の時を知らせます。
音を発する機能にこだわりを持ち続けてきたジャガー・ルクルトならではの、澄んだ音色と十分な音量を楽しめます。
さらに、このウエストミンスター機能のために、分針をステップ運針(針が不連続的に飛ぶように進む運針)としており、分が切り替わる寸前にミニッツリピーターが起動された際にも誤差が発生しないシステムが備わっています。
この複雑なメカニズムを小さな腕時計の内部に組み込んでいることから、この「ウエストミンスター」搭載モデルは格別な存在とみなされています。
パーペチュアル
モデル名の「パーペチュアル」部分が表す「パーペチュアルカレンダー(永久カレンダー)」は、日付調整不要で半永久的に作動するカレンダー機能のことです。
大の月・小の月はもちろん、閏年の2月までもがプログラムされ、月の切り替わりを自動で表示可能です。
動かし続けている限り、理論上は100年に一度しか修正の必要がないカレンダー機構となっています。
一般的なパーペチュアルカレンダーでは、基本的に修正の必要がない代わりに、いざ修正するとなった時には難しさがともなっています。
カレンダーの修正禁止時間帯(20時~翌4時となっている場合が多い)が複雑かつ厳格に定められており、誤ってその時間に操作してしまうと内部の突起が絡まりあって故障の原因になってしまう場合があります。
また同様に、時間や日付を遡ろうと逆回しを行うと、思わぬ負荷をかけてしまって不具合に繋がったりします。
このように「パーペチュアルカレンダー」は画期的な機能である反面、初心者にはとっつきにくいイメージが強いですが、このモデルでは修正禁止時間帯がなく、逆戻しも可能と利便性・安全性が高くなっています。
さらなるこだわりとして、このモデルではポインター針が文字盤上を回転することでデイト表示をするのですが、6時の位置に配置されたジャイロトゥールビヨン機構がよく見えるように、16日と17日の間でポインター針がジャンプするという設計になっています。
針がキャリッジの回転の鑑賞を妨げないという、時計ファンの気持ちを考えた嬉しい仕組みです。
ジャイロトゥールビヨン搭載の人気モデル
マスター・グランド・トラディション・ジャイロトゥールビヨン・ウエストミンスター・パーペチュアルのほかにも、ジャイロトゥールビヨンを搭載した人気モデルはいくつも存在しています。
ここでは、ジャイロトゥールビヨン搭載の人気モデルのうち、代表的なものをご紹介します。
ジャイロトゥールビヨン1
初代ジャイロトゥールビヨン搭載モデルであるジャガー・ルクルトの「ジャイロトゥールビヨン1」は、2004年に発表されると時計界にセンセーションを巻き起こしました。
ャイロトゥールビヨンに加えてパーペチュアルカレンダーも搭載されています。
デザインとしてはジャイロトゥールビヨン機構を中心に、4つのレトログラード針(扇形に運針するように設計されている針)によるパーペチュアルカレンダーを楽しめるようになっています。
現在でも2000万円を超えるような価格で販売されていることもある、超高級時計です。
マスター・グランド・トラディション・ジャイロトゥールビヨン 3・ジュビリー
ジャガー・ルクルトの「マスター・グランド・トラディション・ジャイロトゥールビヨン 3・ジュビリー」は、ジャイロトゥールビヨン搭載の代表的なモデルの1つです。
ジャイロトゥールビヨン機構をデザインの中心とし、インダイヤル(文字盤内に配置される小さな文字盤)が絶妙に配置しているのが特徴となっています。
ケース素材にはプラチナが採用されており、ムーブメントはジャガー・ルクルトの高精度なCal.176です。
やはり何千万円というような高額な販売価格になっています。
レベルソ・トリビュート・ジャイロトゥールビヨン
ジャガールクルトの人気コレクション「レベルゾ」は、長方形の反転ケース(ケースが反転することで、スポーツなどの際に風防が破損しない機能)が特徴の人気シリーズです。
そのレベルゾシリーズの生誕85周年を記念して発表されたのが「レベルソ・トリビュート・ジャイロトゥールビヨン」です。
反転ケースの中にジャイロトゥールビヨンを搭載するという難問を解決している点が、最大の特徴と言えるでしょう。
さらにトゥールビヨンのキャリッジが2層構造になっており、外側は文字盤に対して水平に回転、内側は垂直に高速回転することで、キャリッジの動きがまるで宙を舞うかのように見える点が人気です。
マスター・グランド・トラディション・ジャイロトゥールビヨン 3・セット
ジャガー・ルクルトの「マスター・グランド・トラディション・ジャイロトゥールビヨン 3・セット」は、ホワイトゴールドのケースを、ベゼル周りとリューズに合計6カラットのダイヤモンドで彩った豪華な腕時計です。
文字盤内部もホワイトにブルー針のインダイヤル、9時位置にスモ-ルセコンドとデジタル表示のクロノグラフ機能、3時位置にはデイ&ナイト表示、6時位置にジャイロトゥールビヨンと、驚くべき多機能と、それを生かしたデザインになっています。
ジャイロスコープトゥールビヨン・クリストファー コロンブス スケルトン チャールズ フレック
「ジャイロスコープトゥールビヨン・クリストファー コロンブス スケルトン チャールズ フレック」はスイスの高級時計メーカー・ゼニスが手掛けたジャイロトゥールビヨンモデルです。
重力の影響を最小化するジャイロトゥールビヨンですが、そのキャリバー自体を水平に保つ「ジャイロスコープモジュール」機構が搭載されているのが特徴です。
これにより、「時計の精度を守る」ということに対してさらなる強さを持っています。
飛び出したスケルトンガラスカプセルから、内部機構の美しさを堪能できる1本となっています。
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ジャイロトゥールビヨンは時計の歴史の中でも画期的な発明であり、ジャイロトゥールビヨン搭載モデルは高額なものばかりでした。
それだけに、もしジャイロトゥールビヨン搭載の時計を買取に出そうと考えるなら、買取業者は慎重に選ばなければなりません。
ジャイロトゥールビヨンモデルの時計を適正な価格で買取するためには、ジャイロトゥールビヨンの価値、モデルごとの人気、保存状態、中古市場の動向といった様々な要素を正確に見極める必要があります。
これはブランド時計の高い専門知識と査定技術を持った買取業者でなければ難しい仕事です。
ジャイロトゥールビヨンモデルの時計を売るなら、やはりブランド時計の買取実績が豊富な買取業者に任せるのが安心だと言えるでしょう。
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