中国の掛け軸ってどんなもの?中国掛け軸の特徴や作家を紹介

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日本の掛け軸は、奈良時代に中国から伝来されたと言われています。
最初は拝む目的で伝わった掛け軸ですが、途中からは日本らしい季節感溢れる風景画を描いた掛け軸が流行し、中国の掛け軸とは違う文化として発展していきました。
この記事では、日本の掛け軸とは違った魅力がある、中国掛け軸の特徴について詳しく解説します。

中国掛け軸の歴史

中国掛け軸は、西暦1000年ほどから始まると言われています。
しかし、日本では飛鳥時代にすでに中国から伝わった文化と言われていますので、中国では800年代くらいからすでに発祥していたと考えられます。
中国掛け軸は仏教的な意味合いが強く、日本にも仏具として伝来しました。
最初の頃は額に納めていたようですが、持ち運びが不便だったことや、運搬中に破損しないよう巻物のような形となりました。
日本に伝わった頃にはすでに紙の形だったそうです。
中国掛け軸の特徴

ここからは、日本の掛け軸と比較しながら、中国掛け軸の特徴について詳しく解説します。
特に見分けやすい代表的なポイントを中心に紹介していきましょう。
絵画に詩句がついている
中国には古くから「書画同源」という考えがあり、詩と絵画はセットでなければならないという考え方です。
このような背景から、中国の掛け軸には、必ず絵画に詩句が添えられています。
絵画や書は単独で描かれていることが多い日本の掛け軸とは、大きく異なるところです。
文人表具
中国の掛け軸の表装には文人表具が使用されています。
掛け軸に使われている表装は、日本で生まれた「大和表具」と中国で生まれた「文人表具」の二種類があります。
文人表具は、中国明王朝時代の表装形式で特に文人画の表装として用いられていました。
文人表具には、「袋仕立て」「唐表具」「明朝」の3種類があります。
技法
中国の掛け軸と日本の掛け軸の大きな違いは、色彩と画風です。
例えば日本と中国の山水画には、技法に大きな違いがあります。
にじみやぼかしを多く使用している日本に対し、中国では輪郭をくっきりと描く技法が用いられています。
また、季節感を大切にする日本の山水画に対し、中国の山水画は山のイメージを全面的に使用した鋭い印象のものが多いことも特徴です。
落款印
掛け軸には作者の名前を示す落款印が捺されていることが多いですが、中国の掛け軸の落款印は、作品の一部として鑑賞されており、非常に価値があると言われています。
日本の落款印は、「作家のサイン」または「作品が完成した証明」として使用されていますが、中国では落款印そのものに美術品としての芸術的な価値があるとされています。
中国の掛け軸にたくさんの印が捺されているのも大きな特徴です。
中国では、落款印は作者だけでなく所有者も捺すこととなっており、過去に誰が所有していたかを示すものでもあります。
落款印がたくさん押されているほど、多くの所有者が所有していたことになり、その掛け軸の価値にも影響しています。
見た目
中国掛け軸の特徴は見た目で簡単に判別できます。
まず、日本の掛け軸は山や河の画に対して季節を感じられるものが多いです。
しかし、中国掛け軸では、山や河そのものに焦点があたっていることが多く、季節や情緒を感じさせるような作画は少ないです。
河の荒々しさや、山の鋭さなど、力強い印象を受けることが多いのが特徴です。
掛け軸の形状にも違いがあります。
掛け軸を巻く際に使用する軸先は、中国の方がサイズが大きいです。
また掛け軸を吊るす紐がついている部分を表木といいますが、日本は半月状になっているのに対し、中国のものは四角くなっています。
そして最後に、中国の掛け軸は日本の掛け軸に比べて長いのが特徴です。
日本の掛け軸は、一般的に床の間に合わせたサイズで作られています。
中国掛け軸にはサイズの基準がないので、床の間にかけた時に30cm以上余ることもあります。
中国掛け軸の主な種類

中国掛け軸の中でも代表的な種類について詳しく解説していきます。
中国水墨画
中国水墨画は、筆を運ぶ時の勢いを使って強弱を表現しています。
墨のにじみを使って柔らかい自然を表現している日本の水墨画とは違い、中国の水墨画はダイナミックで力強い印象があります。
中国山水画
中国山水画は、自然を題材とした絵画のような作品です。
風景画とは違い、山を霊獣などの住処として表現している中国人の感性が表現されています。
また、中国の山水画に描かれる風景には理想郷のようなイメージがあり、中国の高い精神性が要求されています。
日本の山水画との大きな違いは、実写風景が描かれているのに対し、中国の山水画は実際には存在しない、想像上の景色が描かれているところです。
文人画(南宗画)
文人画とは、職業画家ではない、文人や知識人が余技として書いた絵画のことです。
技術的な絵画よりも自由な表現によって主観的に描かれているところから、当時の中国では高く評価されていました。
院体画(北宗画)
院体画は職業画家によって描かれた作品のことです。
主観的に描かれる文人画とは異なり、花鳥や山水などを精密で写実的に描いています。
墨の濃淡を使って陰と陽を表現し、ダイナミックで繊細な表現が特徴です。
中国花鳥画
四季の移り変わりなどを描いた画題のひとつです。
花鳥画といっても花と鳥だけではなく、草木や虫、小動物なども描かれています。
言葉遊びなども含まれたことから、富裕や子孫繁栄、長寿などの願いを込めて、文人同士の贈答品として利用されていました。
中国花鳥画は、初期は鉤勒填彩という画報が用いられており、正確な描写が重視されていました。
その後、輪郭を加えず色彩や筆のタッチを使って表現する没骨法も取り入れ、画院以外の士大夫や僧侶にも高く評価されています。
中国掛け軸の有名作者

中国の画家は有名な作者がたくさん存在します。
有名な作者の中でも掛け軸の作品では、絵画だけでなく書にも長けている作家は多くいます。
ここでは、中国の画家の中でも、特に有名な作者を紹介します。
呉昌碩
呉昌碩は、中国近代で最も優れた芸術家と言われた芸術家です。
詩・書・画・篆刻すべてに精通していたため、「四絶」と称賛されていました。
幼少の頃から勉学に励んでいましたが、太平天国の乱で一家離散し、21歳まで放浪生活を送っていました。
その後、56歳で知事となるものの、たった1ヶ月で辞職し、その後は書画で生計を立て、84歳で亡くなるまで多くの作品を残しました。
代表作は「牡丹水仙図」や「臨石鼓文」で、気品ある個性的な画風が特徴で、特に花の画を得意としていました。
斉白石
斉白石は、中国で最も有名で人気のある画家です。
1864年に湖南省湘潭の農家で生まれ、最初は大工として働いていましたが、絵画を学び画家として成功しました。
中国近代絵画の巨匠と言われており、「中国のピカソ」とも呼ばれています。
代表作「海老」は、墨の濃淡のみで描かれた躍動感溢れる名作です。
顧愷之(こがいし)
顧愷之(こがいし)は、344年〜405年頃の中国東晋の画家で、名画の祖と呼ばれた人物です。
中国史上で初の画家であり、「画聖」と呼ばれていました。
代表作は「女史箴図(じょししんず)」で、南北朝時代の宮廷生活が描かれた傑作です。
しかし、残念ながら模写しか伝わっておらず、真筆は不明です。
于右任
于右任は、1879年に生まれ、科挙に合格するも漢詩の内容によって政府を追われ日本に留学します。
その後、政治家として活躍しつつ文化人として漢詩や書などでも素晴らしい作品を多数残しました。
有名な代表作は、1912年の「涇原故舊記」です。
白雪石
白雪石は、1915年北京に生まれ、幼少期から絵画の鍛錬を積んでいました。
青年期には、趙夢朱や梁樹年に師事していました。
その後、世界各国で個展を開きました。
この古典は、世界に自分の名前を広めるきっかけになりました。
代表作「漓江一曲千峰秀」は、桂林を幻想的に描いた大作です。
まとめ

中国掛け軸は、日本の掛け軸とは違い「書」が描かれているものが多いのが特徴です。
また、季節を感じる情緒的な画が多い日本の山水画とは異なり、筆の運びの強弱で山や河を力強く表すダイナミックな山水画は、中国掛け軸の大きな特徴です。
中国掛け軸は、希少価値の高い作品も多く、世界中から注目されています。
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