絵画のような美しい帯をつくる人間国宝・細見華岳。作品の買取相場はいくらなのか?

2025.12.05

着物買取 コラム
細見華岳作品の買取

細見華岳(ほそみかがく)の帯をもらっても付ける機会がなく、箪笥にしまったままになっている方はいらっしゃるのではないでしょうか。

細見華岳とは人間国宝に認定されている綴織りの分野では重鎮と呼ばれるほどの着物作家です。

本記事では細見華岳の経歴、人間国宝に認定されるまでの道のり、作品の特徴、買取相場、高く買い取ってもらうためのコツをご紹介します。

細見華岳作品の価値や、その価値とはどのようなものか、本記事を参考にしてみてください。

※本記事の内容は、必ずしも買取価格を保証するものではございません。予めご了承下さい。

バイセル査定士 高橋裕太 バイセル査定士 高橋裕太

「バイセル」の査定士として、月間120件以上の査定、年間では1,000件以上のお客様対応の実績があります。豊富な経験をもとに 12カテゴリ、19品目と幅広い知識を有しています。その中でも着物・ブランド品の査定が得意です。 また、多数のメディアに出演させていただいた経験もあり、様々な角度からリユース業界に貢献したいと思っています。当記事のお品物へのご相談がございましたら、バイセルへお気軽にお申し付けください!

細見華岳とは

細見華岳作品の買取

細見華岳とは兵庫県出身の綴織り(つづりおり)作家の重鎮です。1922年に農家に生まれ、15歳から西陣織機屋である京都幡多野錦繍堂に入所して技術を学びます。しかし、作家活動に勤しんでいた細見華岳は第二次世界大戦中に満州へ徴兵され制作活動の中断を余儀なくされました。

戦後、着物作家の重鎮である喜多川平朗(きたがわへいろう)、森口華弘(もりぐちかこう)に指導を受けながら、日本伝統工芸会や銀座・和光などに作品の出品を精力的に行います。1997年に重要無形文化財「綴織」保持者に認定され、生涯に渡って50以上の作品を作り上げるほど精力的に活動をしてきました。

そして、2012年に惜しまれながら89歳で逝去します。現在、細見華岳の作品はシルク博物館、文化庁、東京国立近代美術館などに所蔵されています。

細見華岳が人間国宝に認定されるまで

細見華岳作品の買取

15歳から修業をしていましたが、21歳の時に満州へ徴収され満州第11国境守備隊に入隊し、創作を断念せざるを得なくなります。第二次世界大戦で敗戦後、台湾や朝鮮半島の外地や満州国などに残っていた日本人は敗戦により日本に帰還し、細見華岳もそのうちの一人でした。

満州から無事に帰還し、6年ぶりに綴織りの制作を再開すると独立して自分の綴織り工房を持つようになります。独立後は古代絹織物「羅」重要無形文化財保持者である喜多川平朗と、友禅の重要無形文化財保持者である森口華弘に指導を受けながら、日本伝統工芸展には50もの作品を出品します。

1963年の第10回・日本伝統工芸展にて初入選したのを皮切りに、それまでは重厚で華美な作品が多い綴織りが主流だったのが、細見華岳は限られた色を使って仕上げる上品な作品に仕上げたことで他の作家との差をつけました。

その後も順当に作品を制作し、1991年~1997年まで沖縄県立芸術大学・美術工芸学部で学生たちの指導にあたります。細見華岳はそれまでの受賞歴と綴織りの技術が認められて、1997年に重要無形文化財「綴織」保持者となりました。人間国宝に認定された細見華岳がそこに至るまでに出品した展示会や受賞歴を年表にしてご紹介するのでご覧ください。

1922年 兵庫県に生まれる
1937年 西陣帯を制作する京都幡多野錦繍堂(きんしゅうどう)に入所
1943年 満州へ徴兵され、満州第11国境守備隊入隊
1948年 シベリアに引揚げされて日本に帰還する
1949年 綴織の制作をし、独立して細見綴織工房を創業する
1963年 第10回日本伝統工芸展にて初入選
1964年 日本伝統工芸染織展にて日本工芸会賞を受賞(68.70年にも受賞)
1965年 日本工芸会正会員となる
1975年 日本伝統工芸展にて大阪府教育委員会賞を受賞、京都府伝統産業新製品作品展にて奨励賞を受賞
1976年 「現代日本の染織展」に出品
1984年 日本伝統工芸染織展にて文化庁長官賞を受賞
1985年 第32回日本伝統工芸展・日本工芸会会長賞を受賞
1987年 日本伝統工芸展にて保持者選賞を受賞
1990年 個展「綴と50年」開催(銀座・和光にて96.99.1500.1506年に5回の展示を行う)
1991年 沖縄県立芸術大学・美術工芸学部教授(〜1997年)に就任する
1992年 京都府指定無形文化財「綴織」保持者に認定
1993年 勲四等瑞宝章を受章する
1997年 重要無形文化財「綴織」保持者に認定(人間国宝)
1998年 式年遷宮記念神宮美術館に綴帯を納める
1502年 京都市文化功労者に表彰される
1505年 西陣織物館に綴織額を寄贈する
1506年 個展「〜綴織に心をこめて〜 人間国宝 細見華岳展」開催(シルク博物館)
1510年 京都府文化賞功労賞を受賞する
1512年 急性心不全のため89歳で逝去

細見華岳作品の特徴とは

細見華岳作品の買取

細見華岳の作品は「爪掻き綴織り」という高度な技法を使っています。

爪掻き綴織りとはノコギリの歯のようにギザギザに刻んだ爪先で、糸を一本ずつ掻き寄せるようにして模様を織っていくものです。

複雑な模様となると1日に1cmしか織れないため、完成度の高い美しい模様を表現するには膨大な時間がかかることだと理解できるでしょう。

細見華岳の代表作は綴帯「友愛」、綴帯「よろこび」、綴帯「陽光」、夏帯「謡映」などがあり、どの作品も華美な色合いと柄を好まず淡色を使った柔らかい色合いが特徴です。

藍色や茶系色といった少ない色で作られた作品も色味が重くなく、高級な帯ならではの上品さを感じられることでしょう。

また、帯一枚に散りばめた細やかな模様もあれば、シンプルに一つの模様を中央に置いた作品など抽象画を彷彿させる作品も多くあります。

細見華岳の買取相場とは?

細見華岳の買取相場とは?

細見華岳の帯の買取相場ですが、近年の着物買取市場の買取例では高いもので~160,000円前後となっています。

ただし、傷やシミ・カビ・強い締め跡があるなど、保存状態によっては買取価格が下がってしまうことがあります。

着用後の手入れや普段の保管方法など、帯の保存状態には十分注意してください。

今回ご紹介したのはあくまで相場ですので、お持ちの帯の正確な価値が知りたい場合は着物買取のバイセルへ査定をご依頼ください。


※上記は2025年11月時点の参考価格であり、実際の買取価格を保証するものではありません。
※ご査定時の市場状況、在庫状況により買取価格が変動する場合ございます。
※お買取相場の価格は未開封の未使用品を想定しています。お品物の状態によって価格が大きく変わる場合がございますのでご了承ください。


細見華岳作品を高く買い取ってもらうコツとは?

細見華岳作品の買取

細見華岳は希少な作家のため、少しでも高く買い取ってもらうには「商品の状態」と「誰に査定をしてもらうか」が重要なのです。この項目では細見華岳作品を買取に出そうと考えている方に、高く買い取ってもらうコツをいくつかご紹介しますので参考にしてみてください。

作家のサインが入った木箱などの付属品も査定に出す

通常、高価な着物には作家名や生産地が記載され、価値があることを証明する「証紙」が付いています。細見華岳作品には本人の毛筆サインと印が押された木箱と付属の証明書があります。

買取市場でもめったに出てこないプレミア度の高い作品なので付属品(新品時についてくる箱・保存袋)がなくても高額買取が期待できるでしょう。ただ、査定時に付属品がそろっていると「希少な作品を大切に保管をしている」「次にその作品を欲しい人にとって安心感がある」といった理由から買取金額に加算される可能性があります。

買い取ってもらいたい商品をきれいな状態にする

帯のお手入れ方法

帯は長期間、着ていない場合は湿気が溜まっていたり虫に食われている恐れがあるので、正しい収納とお手入れの仕方を知っておく必要があります。湿気は虫が好むので2日〜3日ほど日陰で風通しのいい場所に干しておきましょう。帯かけ付のハンガーにシワを伸ばすようにして掛けます。

通気性が良い場所でも直射日光や蛍光灯の下は帯が日焼けしてしまうので注意します。干すタイミングも前日に雨が降っていた翌朝ではなく、前日も晴れていて湿気の少ない日に行うといった工夫も必要です。

干した後は帯を折り目に沿って長方形になるようにし、収納時は変色や色落ちを防ぐためにたとう紙に包みましょう。帯の収納には湿気を吸い取ると膨張して気密性が高くなる桐箪笥が適しています。

プラスチックケースをお持ちの方も多いため、帯をしまうときは乾燥剤と防虫剤を使ってケース内の帯に触れない位置に入れておくと虫食いや湿気を避けられます。

ただし、防虫剤は複数の商品を同時に使うと帯が変色したり、古くなると水分が溜まってカビの原因になりかねません。基本的に防虫剤は1種類を使い、使用期限を守って使いましょう。

帯締めのお手入れ方法

帯締めとは帯が崩れないように前で結んで固定する重要な小物です。その先端にある「房」は使っているうちに広がってしまい、帯締めをするときに見えなくなるので手入れを忘れがちな部分です。

房は櫛で細かいホコリを取ったら、やかんやアイロンの蒸気で房を湿らせている間に再度櫛で整え、最後に房カバーや帯締め収納カバーに入れて収納すると良いでしょう。

房カバーを持っていない方でもご家庭にあるものを代用品として使えます。ラップ、セロハン、和紙、ガーゼ、配線まとめ、ビニールといった日用品を房のサイズに切って使うと房カバーと同じ役割をするので試してみましょう。

人から譲ってもらった当時はきれいな状態だったとしても、買取をきっかけに久しぶりに取り出したら、帯や帯締めが汚れていると焦ってしまいます。気持ちよく買取に出したいのであれば、少々の手間ではありますがお手入れをしておくことをおすすめします。

複数の買取業者を比較して査定が丁寧な着物買取店を選ぶ

着物を買い取ってもらえる業者はリサイクルショップやオークションなどがあります。しかし、買取市場に出回らないほどの希少な細見華岳作品をこれらを利用することはおすすめできません。

着物は査定項目が多く、知識と豊富な経験がないと適正な価値の見極めが難しい商材だからです。その為、買取業者を選ぶ際に「着物買取店であれば安心して買取に出せる」と一概に言えるものではありません。

着物に対する知識の裏付けに精度の高い真贋力を持った査定士が多くいる買取業者を選ぶ必要があります。買取業者を選ぶ際に失敗を避けるには複数の買取業者を比較しましょう。

複数の着物買取業者に査定をしてもらうと、それぞれ買取金額・査定士の対応・業者のサービスの違い・訪問までの早さといった特徴が見えてくるようになります。

1社だけの査定だと高く買い取って欲しいあまりに買取金額のみで選びがちですが、比較するとより冷静な判断ができます。細見華岳作品を「価値の高いもの」と認識して、複数の着物買取店に査定をしてもらいましょう。

細見華岳作品の買取相場:まとめ

細見華岳作品の買取

今回は細見華岳の経歴、人間国宝に認定されるまでの道のり、作品の特徴、買取相場、高く買い取ってもらうためのコツを紹介しました。細見華岳作品を高く買い取ってもらうにはいくつかポイントがあるのでおさらいしましょう。

  • 作家のサインが入った木箱などの付属品も査定に出す
  • 買い取ってもらいたい商品をきれいな状態にする
  • 複数の買取業者を比較して査定が丁寧な着物買取店を選ぶ

長年、着用していない着物や帯を査定に出すときは作品について理解を深め、さらにお手入れをしておきます。希少価値のある作品を査定に出すのであれば「丁寧さ」と「査定経験の豊富さ」で決めると、納得のいく買取ができる可能性が上がるでしょう。