甲冑の買取相場はどれくらい?高価買取のポイントもご紹介

戦国時代などには戦いの道具として使われた甲冑は、現在では室内などに飾る美術品・骨董品としての側面が強いかもしれません。
実際に、歴史的・文化的価値のあるものとして買取市場でも活発に取引されています。
では甲冑を売りたいと考えたとき、その買取相場はどれくらいになるでしょうか。
また、高く買取されやすい甲冑とはどのようなもので、買取業者はどのように選べばよいでしょうか。
甲冑の種類と歴史

甲冑は刀剣と同じく、日本の文化として古来より多くの人から愛されてきました。
甲冑には様々な種類があり、国宝や重要文化財として芸術的価値が高いものもあります。
当然、その形状も時代とともに進化して来ました。
甲冑の発祥は常陸国風土記に記されており、日本刀の起源や剣術等の発祥が東北地方であるため、東日本が発祥とされています。
歴史的に見ていくと、その起源は弥生時代にまでさかのぼります。
組合式木甲と刳抜式木甲
弥生時代には「組合式木甲(くみあいしきもっこう)」や「刳抜式木甲(くりぬきしきもっこう)」といった木製甲がありました。
奈良県の遺跡などでいくつか発掘例があります。
短甲と挂甲
古墳時代には、帯状鉄板を革綴(かわとじ)ないし鋲留(びょうどめ)して組み立てる日本列島独自の形態の「短甲(たんこう)」や大陸の影響を受けた「挂甲(けいこう)」と呼ばれる甲(鎧)が出現するようになります。
短甲は、木製・革製・鉄製のものがあり、基本的には肩から腰の胴体を保護する胴甲であり、腿部を防御する草摺(くさずり)や首を防御する頸甲(あかべよろい)、上腕部を防御する肩甲(かたよろい)が取り外し式で付属している例もあります。
挂甲は、鉄や革でできた小札を縦横に紐で綴じ合わせて作られており、胴体の周囲を覆い前面や両脇で引き合わせて着用します。
「短甲」とはまったく違った構造をしているのが特徴です。
綿襖甲
奈良時代には引き続き短甲・挂甲が使用されましたが、実物が現在まで残っておらず、どのような形態や外観をしていたのか定かではありません。
しかしながら、古墳時代のものとは形態的に違ったものであったと考えられています。
奈良時代中頃には遣唐使によって大陸から「綿襖甲(めんおうこう)」が伝わり、各地の軍団にも導入されました。
綿襖甲は、二枚の布の間に綿などを挟み込んだ鎧で、世界中で使用されているキルティングアーマーの一種です。
綿襖甲は形を外套状にしており、外側から金属製の鋲を打って内側に鉄や革製の小札(こざね)を止めている事が大きな特徴です。
大鎧
平安時代になって武士が出現し、馬上で弓を射る騎射戦に対応すべく「大鎧(おおよろい)」という独自の甲冑がみられるようになりました。
この時代には唐(現在の中国)との交通が絶えたことにより日本的な趣向が台頭し、甲冑にも大きな変化が現れました。
これにより綿襖甲は廃れていきました。
大鎧は、兜・鎧(胴)・袖の3つの部品で1セットとし、腹巻や胴丸と同じく多くの部分が小札(こざね:短冊状の小さな板で、重ねながら連結する)により形成されています。
平安時代の戦闘は一騎駆けの騎馬戦が主であったため、大鎧は弓の使用や矢による攻撃への防御を重視した構造となっており大袖(おおそで)・鳩尾板(きゅうびのいた)・栴檀板(せんだんのいた)等の部品が付属し、兜の吹返しも大きいのが特徴です。
平安時代から鎌倉時代までを大鎧時代と呼ぶこともでき、源平時代に日本の甲冑は最高度に発達し、現存数は少ないですが荘重優美を極めました。
腹巻と胴丸
「腹巻(はらまき)」は大鎧に比べて軽量で軽便な構造であり、腰部が細く身体に密着し、腰から下を防御する草摺(くさずり)も細かく分岐しており足さばきが良く、胴丸と同じく徒歩戦に適した動きやすい鎧です。
元々は下級の徒歩武士により主に用いられていましたが、その動きやすさから次第に騎乗の上級武士も兜や袖・杏葉などを具備して重装化して着用するようになっていきました。
着用者の胴体を革製や鉄製の小札を糸や革で繋ぎ合わせて覆い、背中で引合わせ(開閉)する構造となっています。
「胴丸(どうまる)」も元々は下級の徒歩武士が使用していましたが上級武士も使用するようになり、それに相応しい華美なものへと発展していきました。
胴丸の構造は、下半身を防護する草摺が大鎧の4枚に対して8枚に分かれており、足が動かしやすく徒歩で動くのに適した作りです。
当世具足
室町時代は大鎧よりもはるかに略的な鎧である胴丸・腹巻併用時代と言うことができますが、集団戦や鉄砲戦といった戦術の変化や武器の進歩、西洋甲冑の影響などのさまざまな要因により、室町時代後期から安土桃山時代にかけて甲冑は大きく変化していきます。
こうして戦国時代(15世紀末~16世紀末)には「当世具足(とうせいぐそく)」が一世を風靡するようになりました。
大鎧・胴丸・腹巻は個々の具足がほとんど同じ構造で、色糸の色を変える程度しかバリエーションが無かったのに対して、当世具足は多種多様な形式を持つのが特徴です。
胴丸などが皮の小札を色糸で綴るなど大量生産には向かない構造であるのに対して、当世具足は小札が鉄製の大型のものに変わり大量生産向きとなり、防御力も増しました。
さらには大面積の鉄板をつなぎあわせたり一枚板を打ち出した構造に発展しました。
集団戦や鉄砲戦に適した鎧であり、機能性・生産性を重視し、板札(いたざね:小札の横一段を一枚の板で作成したもの)や蝶番(ちょうつがい)を用いるなどの工夫が凝らされ、鉄砲の弾丸を反らせるための曲線や傾斜を多用した工夫も施されています。
しかし江戸時代になると世の中が平和になり、甲冑は次第に実用的ではない形式的な位置付けとなっていきました。
甲冑の買取相場はどれくらい?

買取市場における甲冑の買取相場とはどれくらいになるでしょうか。
甲冑の価値は種類や物によって様々で、買取相場にも大きな幅があります。
品数が少ない希少なものや有名な大名が身に付けた一点ものなどは価値が非常に高く、何百万円あるいはそれ以上の価格がつくような高額な甲冑も存在しています。
足軽兵の甲冑
足軽用に作られた簡素な甲冑は、武将の甲冑より簡単な作りになっていることや量産されていることから、あまり価値としては高くないようです。
買取相場はだいたい数万円~10万円台が一般的です。
武将用の甲冑
真田幸村など、歴史ファンに知られる有名武将の甲冑は需要が高く、買取価格も高くなりやすい傾向があります。
当然、どの武将の甲冑かによって価値は大きく変わっていきます。
一方無名な武将でその地位も足軽に近いものであれば、足軽兵の甲冑よりも高いとはいえそれほど価値が高くなることはないようです。
ちなみに、大名に近いような位の高い武将のものだと100万円以上の価値があるものも存在するようです。
大名の甲冑
大名の甲冑は足軽兵達の甲冑とは違い、精巧な作りになっています。
伊達正宗の雪の下胴や最上義光の最上胴など大名たちによってその種類は様々あり、あくまで目安で一概にこの価格とは言えませんが、買取相場はおおむね100万円前後にはなるようです。
桶側胴・仏胴など作りの種類によっても相場は変わります。
数千万円にもなる一点しかないようなプレミアな甲冑も存在しているようです。
甲冑を売る時はどんな買取業者を選べば良い?

非常に高い価値がつくものもある甲冑ですが、買取に出す際にはどのような買取業者を選べば良いでしょうか。
甲冑を安心して売るために押さえておきたい、買取業者選びのポイントについて解説します。
武具の買取実績豊富な業者
甲冑の価値を正確に査定するためには、甲冑の特徴から制作年代や使った人物の位などを見極められなければなりません。
武具に関する高い専門知識や査定技術を持った買取業者でなければ、甲冑の価値を正しく見極めるのは難しいでしょう。
そこで、武具の買取実績を豊富に持っているかどうかは、買取業者を選ぶうえで是非とも確認しておきたいポイントです。
甲冑や刀剣といった武具の買取実績が豊富な買取業者なら、甲冑を安心して買取に出せると考えられます。
刀剣の買取に関しては以下のページが詳しくなっています。
刀剣の買取相場・刀剣買取の注意点など、甲冑とあわせて刀剣の買取についても知りたい方はぜひご参照ください。
出張買取サービスを選べる買取業者
甲冑はたいへん重いです。
買取に出そうと思っても、買取店の店頭まで持ち運ぶのには大きな手間や労力がかかります。
また、無理して運んでいる間に傷をつけてしまっては、買取価格に影響する可能性があります。
そこでおすすめしたいのが、大手の買取業者が行っていることの多い出張買取サービスです。
出張買取とは、買取業者の査定員が利用者の自宅等まで来て査定・買取してくれるサービスのことです。
契約が成立すれば、売った甲冑はそのまま買取業者のスタッフが持って行ってくれます。
甲冑のような重いものを売る際には最も適した方法であるといえるでしょう。
甲冑を手軽に売りたいなら、出張買取サービスを選ぶことができる買取業者がおすすめです。
各種手数料が無料の買取業者
甲冑に限らず、買取サービスを利用する際には業者によって査定料・キャンセル料・出張買取の出張費といった手数料がかかる場合があります。
手数料がかかっては、せっかく甲冑を売っても実際に手にできる買取金額は目減りしてしまいますし、「試しに査定だけ」と思っても気軽に依頼できません。
そこで、甲冑を気軽に買取に出したいなら、査定料・キャンセル料・出張買取の出張費といった各種手数料を無料にしている買取業者がおすすめです。
甲冑を高く売るために知っておきたい高価買取のポイント

甲冑の買取では、芸術品としての価値・工芸品としての価値・歴史的な価値などを鑑みて、いくつもの観点から査定価格が決められます。
では、どのようなものなら高く買取してもらえる可能性が高くなるでしょうか。
甲冑を高く売るために知っておきたいいくつかのポイントをご紹介します。
有名な甲冑師の作品かどうか
日本の甲冑の歴史上には、名工と呼ばれる有名な甲冑師が存在します。
そのような名工の作品であった場合には買取市場でも需要が高くなり、高価買取の可能性も高くなるでしょう。
具体的には、明珍派・早乙女派といった戦国時代の作品や、現代であれば人間国宝の牧田三郎(まきたさぶろう 1905-1993)といった有名作家の作品であれば高く買取されやすいでしょう。
どの時代につくられたものか
甲冑の制作年代も、甲冑の希少性に直結するとして査定時には必ず確認されるポイントです。
例えば、古いもので保存状態が良ければ、やはり希少価値があるとみなされるでしょう。
しかし、単純に古ければ良いというものではありません。
甲冑は戦いの道具であるため、戦乱の時代には大量に生産されますが、平和な時代には生産量が大幅に落ちます。
そのような生産量が少ない時代に作られた甲冑であれば、希少性を認められて高く買取される可能性があるでしょう。
細やかな細工がなされているか
甲冑はもちろん戦いの道具ではあるのですが、有名武将や大名などの位の高い人物の甲冑には金工・錬金・漆芸・組紐など日本工芸の高い技術を生かした細工が施され、芸術品として高い価値が認められるものもあります。
美しく細やかな細工が施されている甲冑は美術品としての需要が増すため、高く買取される可能性があるでしょう。
甲冑の保存状態が良いか
買取市場における甲冑は美術品・骨董品としての側面が強いですから、保存状態の良し悪しは重要な査定ポイントになります。
甲冑に欠けや割れなどがあるなど、保存状態が良くないと買取価格は下がってしまうことが多いでしょう。
付属品がついているか
甲冑には箱や、その甲冑について記した書物などがついている場合があります。
それらの付属品も、コレクターにとっては重要なコレクションの一部です。
付属品があるものは買取市場での需要が高くなり、査定でも有利に働く場合があるでしょう。